11-4.end

 すっかり抵抗の姿勢を見せなくなったメリーさんを含めた四人は、近くのピクニックテーブルに場所を移して、彼女の話を聞くことにした。

「知っての通り、私はメリーさんで、瞬間移動の能力を持っているんです。でも、その能力を使うには誰かに電話をかけなければならなくて……」

 未だに顔の青いメリーさんは申し訳なさそうに話し続ける。

「今日はお買い物に行きたかったんですけど、この暑さじゃないですか。私、暑いの苦手なんです」

「だから横着して姉さんを使って瞬間移動の能力を使ったんですね」

 空子の問いに、メリーさんは首を縦に振って答えた。

「でもこの能力を使った時は最終的に電話の主の後ろに現れなくてはいけなくて……」

「それで、姉さんを殺すつもりだった?」

「いやいや! そんなことは……。ただ、軽く脅かして気を失わせて、気付かれないうちに帰ろうと……」

 メリーさんは手を大きく振って否定した。その言葉に嘘の気配は感じない。となれば、天子達が怯えていたのは杞憂だったというわけだ。

「なーんだ。走り回って損した」

「ええ。姉さんのことは残念ですが、これにて一件落着ですね」

「HAHAHAHAHA!」

 愉快な笑い声が、公園にこだました。


 明くる日。駆人と空子は買い物に出ていた。

「あ、お財布を忘れてしまいました」

「そうですか。僕が取りに帰りましょうか?」

「いえ。こういう時は……」

 空子は携帯電話を取り出すと、一言二言言葉を交わしてすぐに通話を切る。

 すると、すぐに駆人の携帯電話に着信があった。……、非通知?

「もしもし」

「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

 何度も聞いたあの声。思わず勢いをつけて振り返ると、そこにはゴシックなドレスを着た金髪の少女、メリーさんがいた。

「お財布、お持ちしました」

「どうもありがとうございます」

「いえ。また何が御用があれば」

 メリーさんは空子に財布を渡すと、すぐにどこかへと消えてしまった。

「い、今のは」

「メリーさんですよ。罪を償いたいと言って、私とか、あと怪対課の方でお手伝いをしているそうです」

「ああ、なるほど」

「目の回し過ぎで死んでしまった姉さんも、草葉の陰で喜んでくれることでしょう」

「はい……」

 空を見上げると、天子の笑い声がどこからか聞こえるような気がした……。

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