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 リモコンが消えるのも、物忘れをするのも、小指をぶつけるのも、集中が続かないのも、イヤホンが絡まるのも、全部妖怪の仕業です!

 なんて言うと、荒唐無稽な責任転嫁に聞こえるでしょうね。ですが、昔から伝わる名のある妖怪というのも、大半はこういった日常生活の不便や不可解に名前が付けられたものなのです。

 人間というのは概して理由のない物、理屈の分からない物を怖がりますからね。

 え? 妖怪こそ理の外側の存在だろうって? いえいえ、そんなことはないんですよ。

 話はとびますが、皆さん人間に限らず、生き物というのは生きていくのに酸素が必要ですよね? でも、本当に酸素って存在しているんでしょうか。

 確かに、息を止めれば苦しいですし、死んでしまいます。しかし、酸素を実際に見たことがある人はほとんどいないでしょうし、酸素がどう生命活動に必要なのか、ないと何故死んでしまうのかを説明できる人も少ないでしょう。

 ですが、我々は酸素が生きていくのに必要だと信じています。だって、教科書に載っているから。偉い学者の先生が言っていたから。

 妖怪もそれと同じなのです。わけのわからない現象に名前を付けて生き物のように扱ったり、宗教関係者の司祭や僧侶が心配することはないと諭したり。理の中にあるものだと信じることによって安心を得たのです。

 ある意味、妖怪の存在は精神の安定を得る、生きるための知恵なのかもしれませんね。

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