6-3.

「それこそどういうこと!?」

 栞は完全に平静を失っている。手足の動きがおぼつかない。

「いや~。お二人には黙っていましたが、ここにこんなレトロなゲームセンターってないはずなんですよね~。それで面白そうだと思って入ってみたんですが、こんなことになってるとは」

 そう言いながらも、真紀奈は一切悪びれる様子を見せない。それに続けるように今度は駆人が口を開いた。

「こんな都市伝説を聞いたことがある。ゲームに熱中するあまりに飲まず食わず、睡眠もとらずに遊んでいた人が遊んでいる最中に死に、その魂がゲームに囚われているという話を」

「つまりその魂とやらを満足させてやらなければいけないわけですね~」

「だがそう簡単ではなさそうだね。格闘ゲームの腕は見たとおりだし、ここにあるゲームはシューティングもパズルも、ほとんどのゲームで桁違いのスコアを出している」

「となると、勝てそうなゲームは」

 栞は困惑した。この二人は何故この状況にそんなに早く適応しているのか、何故そんなに楽しそうなのか。肩書が警察の真紀奈はともかく、駆人は自分と同じ一介の高校生のはずなのに……。

「じゃあ取り合えずこの辺りで小手調べ~」

 真紀奈が選んだゲームは『ゾンビ☆パニック』。拳銃型のコントローラを用いる体感型3Dシューティングゲームだ。迫りくるゾンビを銃でやっつけまくる爽快感が売り。

 このゲームにはスコアアタックモードがついており、時間内に倒した数で競うことができる。

「真紀奈はやったことあるの?」

「ありませんが、警察ですから銃の扱いくらいはお手の物です!」

 ゲーム開始。次々と標的のゾンビが出現し、それをリズミカルに打ち倒していく。確かに言うだけあって狙いは正確だし、スピードも速い。

 時間切れになってスコアが表示される。Sランク! 最高評価だ。だが、ランキング画面に移ると、一位とは差がそれなりに開いた二位という結果に終わっていた。

「ああ~。これでもダメですか。じゃあ、次は……」

 やっぱりどこか楽しそう。こうなったら自分も楽しむべきだと思った栞は、一台のゲーム筐体に目を付けた。

「あ、あれはどうかな」

 栞が指さしたのは『クロコダイル・アクシデント』。もぐら叩きゲームだ。横に並んだ穴から鰐の形の標的が出てきて、それを叩けば得点の単純なゲーム。

「その幽霊ってのは一人なんでしょ? これなら二人以上でやればいい得点が出せるんじゃない?」

「なるほど。確かにそれはいい考えかもしれません。やってみましょう!」

 幅的にそう何人も並べないので、栞と真紀奈がやることにした。

 ゲームスタート。愉快なナレーションと共に、標的の鰐が動き出す。栞は付属のハンマーで、真紀奈は素手で鰐を叩く。

 ここまで一匹も逃していない。中盤からはペースアップ。複数の鰐が同時に出てくるが、二人は手分けしてそれを叩き続ける。

 そしてタイムアップ。華やかなファンファーレと共にスコアが表示された。

「これって、パーフェクトじゃない?」

 そのスコアは九十九。デジタルのスコア板が表示できる最大値だ。

「やったね! って、二人掛かりじゃあんまり喜べないか」

 喜んでいる栞の後ろで、愉快なナレーションが始まった。三人は操作していないのに、だ。

 すると、ハンマーがひとりでに宙に浮き、動く鰐を叩き始めた。

「ひええ。これってもしかして」

「幽霊さんが動かしているのでしょうか。軽快ですね~」

 宙に浮くハンマーは、二人掛かりの栞達と同等、いや、それ以上のスピードで鰐達を叩き伏せていく。中盤からは調子が乗ったのか更に動きの切れが増し、目で追えないほどのスピードで叩き続けていく。

 そしてタイムアップ。結果は。

「きゅ、九十九……」

 パーフェクトだ、この幽霊、ゲームならビデオゲームも体を動かすゲームも得意らしい。

「確かに考えは良かったね。これと似たゲームでハイスコアの上限がないゲームがあればいいんだけど」

 ガックシと肩を落とす栞の肩を、駆人がポンポンと叩いた。

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