6-4.end

「あ、じゃああれはどうですか?」

 三人で別々な所を探していたが、真紀奈がちょうどよいゲームを見つけた。

 ゲームの名前は『ノック・イング・ドア』。所謂パンチングマシーンだ。立てられた的を思いきり殴るとその強さが数字で表示される体感型を超えた実践型ゲーム。

 スコアのランキング表示には、一位に他のゲームと同じ名前で例の幽霊の名前が記録されている。スコアは『百十』。

「真紀奈、自信あるの?」

「ムフフ。三回できるみたいですから、お二人から先にどうぞ」

 お言葉に甘えて駆人から挑戦することにした。

 専用のグローブを右手につけて、大げさなテイクバックから思いきり腕を振る!

 ……。あまりいい音はしなかった。ゲームの画面では並べられたドアが何枚壊れるかによって結果を表示するシステムのようだ。結果は『五十』。いい成績ではない。

「じゃあ次は私ね」

 続けて栞がグローブをつける。足をどっしりと構え、腕を引く。駆人よりは構えが堂に入っている。そして真っ直ぐに的を突いた!

 ……。快音と共に的が勢いよく倒れる! 勢いよくバリバリとドアが破壊される。結果は『八十』。

「あれ、結構いい成績かも」

「そ、そうなのか……」

 駆人の額から冷や汗が流れた。

 だが、それでも幽霊のスコアには届かない。残るは一回。挑戦者は真紀奈。

「あ、グローブどうぞ」

「いえいえ~。私はそれを使いません故~」

 そう言うと真紀奈は懐から大きな機械を取り出した。

「え、なにそれは」

「これは杭打機です! アニメとかゲームでよく見るでしょう?」

 チェーンソーのような見た目で、刃の代わりに金属の棒が突き出ているような見た目。

「いや。あれはゲームだからであって、実際の杭打機はクレーン車みたいなので上から錘を落とす機械なんだけど。ていうか、どこから取り出したんだ」

「いんですよ、細かいことは!」

 真紀奈はその杭打機(?)を腕に装着すると的に狙いを定めた。

「くらえ~!」

 ものすごい音と共に金属の棒が射出され、的にぶち当たる。壊れんばかりの勢いで倒れた的はひしゃげて……、壊れんばかりというか、壊れている。

 表示されたスコアは『五百』。とんでもない威力だ。

「いや~。ハイスコア、ハイスコア~」

 真紀奈は満足げな表情で言った。

「いや。ちゃんと殴らないとルール違反だろ! それにお店のゲーム壊しちゃダメだ!」

「それ言ったらもぐら叩き二人掛かりもルール違反ですし~。何にしろハイスコアはハイスコアです。出口も開いたようですよ」

 確かに壁の一辺が消え、元のゲームセンターの一角が見えている。ただ、辺りの雰囲気が、何と言うか、重い。勝ったから出してくれるというより、さっさと出て行ってくれと言われているような……。

 三人はその雰囲気に押されそそくさとそこを後にした。


 帰る前に表のゲームセンターの休憩スペースで一息つくことに。簡素なテーブルで紙コップの自動販売機で買った飲み物を啜る。

 あのレトロなゲームコーナーに至る入口は三人がそこから出るとすぐに消えてしまった。店の人に話を聞くと、十年ほど前に閉鎖されて久しいらしい。あの場所ごとの幽霊のようなものなのだろうか。

「いや~。ちょっと遊びに来たつもりが大変なことになってしまいましたね~」

「また遊びにって言ってるし。まあ、なかなか刺激的ではあったけど」

「また七生君そんなこと言ってるし……」

「あ、そうです。三人で記念に写真撮りませんか? 今度は最新ので」

「いいね。じゃあ早速……」

 栞と真紀奈はそそくさとプリントシール機のコーナーへと移動した。

 一方駆人はさっきポケットに入れた写真を取り出す。そこに写っている白い人影の顔の部分が少しにじんでいるのは気のせいだろうか……。

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