6.ピコピコアワー~都市伝説遊戯譚~

6-1.ピコピコアワー~都市伝説遊戯譚~

 皆さんこんにちは! 怪奇現象犯罪対策課の牧島真紀奈です! 今日はいつものように駅前をパトロール中です!

 いや~、今日は大漁でした。あっちでお化けをやっつけて、こっちでおやつをたしなんで。こっちで妖怪を捕まえて、あっちで流行のドリンクのお店に並んで。大変ですね~。

 さてさて~、次はどこに遊びに、いやさ巡邏に行きましょうかね~。

 おや? あれに見えるは駆人さんと栞さんではありませんか。これはアヤしいですね~。ちょっとちょっかいかけてみましょう。


 駅前の雑居ビルの通り、その並びのゲームセンターの前でプライズゲームに興じる駆人と栞を、真紀奈は見つけた。

「お二人ともこんにちは~」

「あ、真紀奈ちゃん。こんにちは。今日はお仕事?」

 栞が軽快に振り向いて挨拶を返すが、駆人はアクリル板の向こうを集中してにらんでいる。

「はい。お二人は~、ムフフ。おデートですか?」

「ち、違うよ。そこでたまたま七生君に会って、かわいいぬいぐるみを見つけたから取ってもらおうかなって」

「駆人さん、こういうの上手なんですか?」

「勝手なイメージだよ。あんまりやったことない……、ああ! また外した!」

 駆人の操作する二本爪のアームは、景品を掴むもののすぐにバランスを崩して落としてしまう。

「なるほどなるほど~。ちょっと貸してください」

 駆人と場所を変わった真紀奈はしばらくゲームの中身を眺めると、軽いタッチでボタンを操作し始めた。アームを見事に景品の真上ぴったりに止めると、危なげなく景品をつかみ取り、取り出し口に運んだ。

「うわあ。真紀奈ちゃんすごい」

 栞は取り出し口からビビッドな配色の熊だか犬だかわからないモチーフのぬいぐるみを取り出すと、愛おしそうに抱きしめた。

「ありがとう!」

「えへへ~。ところで~、お二人ともこの後お暇ですか?」

 二人はそろって首を縦に振った。

「ああそれは良かったです。この辺りで都市伝説が出たみたいなので~。ささ、行きましょう」

 真紀奈は二人の手を取ってゲームセンターの中に引っ張り込んだ。


 店の入り口付近には外にあるものと似たようなプライズゲームやプリントシール機が並び、そこを通り抜けるとメダルゲームやアーケードゲームが並ぶ。そこも大分奥まっているが、真紀奈はさらに奥の方へ歩く。

 すると少し視界が開け、背の低いゲーム筐体が所狭しと並べてあるスペースについた。ピコピコとチープな音があちらこちらから響き、画面を見ればザラザラのタイトルロゴがでかでかと映し出されている。他の客は誰もいないようだ。

「このゲームセンターに来たことはあるけどこんな場所があるなんて知らなかったなあ」

「これって古いゲームだよね?」

 駆人は目を輝かせて、栞は物珍しそうに並ぶゲーム機を順に眺めながら歩く。

「はい。三、四十年前くらいのゲームですね」

「ここに都市伝説がいるってこと?」

「いると言うか~。ま、取り合えず駆人さん、こちらのゲームをやってみてください」

 真紀奈が示すゲームは『KITSUNEBIUS』往年の大人気縦シューティングゲームだ。硬貨を入れてゲームスタート。ピコピコと軽快なBGMが響く。

 駆人の操作する戦闘機が、ビームを発射して迫りくる敵機や障害物を次々とやっつける。

「なかなか上手いですね~」

「最初の面くらいなら……、よし」

 言ったとおりに一ステージ目を軽々突破。続いて次のステージが始まる。

「で、真紀奈ちゃん、都市伝説ってのは?」

「もうそろそろですね~。あ、来ましたよ」

 画面の上の方から板とような障害物が回転しながらプレイヤー機に接近してくる。

「あれは障害物で壊せないはずなんですが、なんでも『二五六発連射で打ち込むと壊れる』という都市伝説があるようなんです」

「にひゃく……。まあ、やってみるけど」

 言っている間に障害物は画面を通り過ぎ消えていった。

「制限時間は短いですよ。もう少しで二つ目が来るはずです」

 二つ目の障害物がやってきた。駆人はプレイヤー機を真正面に移動させて、射撃ボタンを思いきり連打した!

「うおおおお!」

 結構なスピードだ。次々とビームが放たれ、障害物に吸い込まれていく。だが、それは一切微動だにせず、効いている節はない。そして、駆人の健闘もむなしくプレイヤー機が障害物に激突すると大爆発。ゲームオーバーになってしまった。

「む、無理だろ……」

「ん~ダメでしたねえ。今のは三十発くらいでした」

「結構速く見えたけど……」

「そもそも障害物が出現してから、一番下で構えている自機に当たるまで五秒ほどでしょうか。更にこのゲームが三十FPSだとしても、一回攻撃するにはボタンを押して、放して、という入力が必要になるわけですから、秒間十五発が限度です。つまり十五発×五秒、七十五発しかシステム上当てられないわけですね~」

「ちょ、ちょっとよく分からないけど」

 真紀奈の込み入った説明に栞は目を回した。

「ま、つまりこの都市伝説はでたらめってことですね。次行きましょ~」

 まるで最初から分かっていたように淡々と言い放ち、歩き出した。

「じゃあ次に遊ぶゲームは~」

 真紀奈は軽快な足取りで鼻歌を歌いながらゲームの群れを物色している。それこそ……。

「もしかして真紀奈。サボりに来たんじゃないだろうな」

「え、ええ!? そんなことあるわけないじゃないじゃないですか!」

 慌てた真紀奈はいそいそと次のゲームの前に座った。

「こ、これこれ、これにしましょう」

 続いてのゲームは『カイキタンZ』左右から迫りくる敵を次々と倒しながら進むアクションゲームだ。硬貨を入れてゲームスタート。

 拳法の道着を着たようなプレイヤーキャラクターが、パンチやキックで悪党共を蹴散らしながら進み、既定のゴールにたどり着けば一ステージクリア。それを何度か繰り返して大ボスのいるステージを突破し、さらわれたヒロインを見事救出すれば、ゲームクリアだ。

「これの都市伝説はですね。『二十六週クリアすると敵のグラフィックがヒロインの物になる』ですね」

「あはは。それってヒロインが襲ってくるってこと? なんだか面白いね」

「でもそれってすごい時間かからない?」

「かかりますね~。ですので、私がやっておきますからお二人は適当にその辺うろついて都市伝説の気配でも探しててください。その時になったら呼びますから」

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