第2話 先生のいない学校に授業はない
「いつからここにいるの。」
僕としずくは授業の代わりにおしゃべりをした。
まあ、だいたいは僕が質問をして、彼女がその答えとそれに関する話を長々とするといった感じだ。
「最近だよ。ほら、あそこにタワー見えるでしょ。街の真ん中の噴水があったところがタワーになってるんだよ。あの光をみて1日過ごしてたんだ。あのタワー中には入れないみたい。1回頂上から景色見てみたいよね。あれ何階まであるんだろ。」
「1番上見えないもんね。じゃあ次の質問。僕以外の人間には会った?」
「ううん。神田くんが初めてだよ。犬とかもいないし。ほらうちのラッキーいたでしょ。ラッキーもいなくて、なんか寂しいかな。」
ラッキーというのは彼女が飼っている犬だ。彼女の家に行った時にすごく警戒され唸られた記憶がある。
「ラッキー、来てくれたらいいね。じゃあ、いつ朝が来るかわかる?」
外はまだ暗かった。タワーの明かりで昼間のように教室は明るいが外を見ると青空は広がっていない。
「朝は来ないよ。時計は回るけどずっと夜のまま。ちなみに天気もずっと晴れだよ。でも私晴れが1番好きなんだ。それも夜。星が綺麗だとさなんか私も綺麗になった気分になれる。ふふ。」
それも知ってる。
僕達は正反対の人間だ。だから僕は雨の日が好きでそれも雨の日の朝が好きなんだ。
僕達は同じ街で幼稚園から一緒にいるけど好みが揃ったことは1度もない。
「あいにく僕は雨の日の朝が好きなんだ。こんな日が続くなんて現実の世界に戻りたいね。」
彼女は少し驚いたように窓の外から僕に視線を移した。
「雨の日の朝が好きなんだ。知らなかった。傘さすのめんどくさいとか言いそうなのに。」
彼女が好きな物が僕は嫌いだけど僕は1度も自分の好みを押し付けたこと、いや、言ったことすらない。
「まあ、気にしないで。じゃあさ、ご飯は何を食べてるの。お店は開いてるのかな?」
朝ごはんを食べずに来たからお腹がペコペコだ。
「お店に行ったら置いてるよ。お財布持ってきた?」
もちろん財布は常に持っている。
「じゃ、行こ。」
彼女は席を立った。
宝箱の中に宝はない しゃまゆ @shamayu_u
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