宝箱の中に宝はない

しゃまゆ

第1話 静かな街に人はいない


体内時計というものは絶対にあると思う。


時計の形をしていなくても、目に見えなくても、体の中にある。僕は脳みその真ん中にあるんじゃないかなと思っている。




毎日6時ぴったりに起きていると今日のような真っ暗な朝でも時計がだいたい6時を指す頃に自然と目が覚める。


いつものようにカーテンを開けるとそこには思っていたのと違う景色があった。




いつもと違っていたことは2つ。


1つ目は天気が晴れだったこと。


これだけ暗かったら雨が降っていると思ったが確かに今日は雨の音がしていない。


異様に静かだ。


そこには今まで見たことないほど綺麗な天の川と満天の星空があった。


僕の家は丘の上にポツンと立っているから街とその先にある海が見える。


いつもは海から日が登るのが見えるが今日は見えない。




そして2つ目は街の真ん中辺りに大きなタワーが建っていたこと。


東京スカイツリーによく似たタワーだが頂上が見えない。


高すぎるのだ。


そしてそのタワーだけがギラギラ光り、街は街頭の明かりしか点っていなかった。




なんだか不思議だったが特別驚いたりパニックになることはなかった。


少し考えてとりあえず制服を着て学校に行くことにした。



着替えてからリビングに行ったが親はいなかった。


仕事で家を空けることが多い親だったから大して心配もしなかった。




自転車で学校まで行ったがその間人を見ることはなかった。



教室にも誰もいないと思って入ったら人がいた。


これには流石に驚いた。


「えっ。」


あまりにも情けない声が出た。


その声に驚いた様に振り返る彼女。



雨宮しずく。



僕と正反対の女の子。



「神田くんだ。おはよう。あ、夜だからこんばんは、かな。」


僕はなんて声をかけたらいいかわからずに突っ立っていた。


「そこ、座りなよ。先生も他の生徒もいないから。」


彼女は前の席を指さしながら言った。


「うん。ありがとう。」


彼女がおしゃべりな子でよかったと初めて思った。




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