「……どうしてこーんなことになっちゃったのかしら……」

　砂塵舞う訓練場の中央にて睨み合う最推しと兄を眺めながら、私は大きく溜息を吐いた。

　遡ること数十分前。

　昨夜の興奮覚めやらぬままいつもより早く目を覚ました私は、ギルバートと連れだって談話室へと向かっていた。

　お父さまに呼び出しを食らったのである。

『クロエ、話がある。談話室まで来なさい。召喚……獣の彼も一緒に』

「……おはなしって一体何かしら……」

　浮かない顔の私の言葉に、浮かない声でギルバートが返事をする。

「大方、俺のことだろう」

「ですよね～～」

　ギルバート。

　スライムの中から突如現れた#召喚人__イレギュラー__#。

　神様見習いからの前置きがあった私はともかく、何も知らないお父さまたちからしたら召喚獣を自称する不審者以外の何者でもないだろう。

　"人間は召喚できない"という前提があるのであれば尚更だ。

「うーん」

　薄々感づいてはいたが、改めて確認すると気が重い。一体何を言われるのか。

　長いようで短い廊下を出来る限りのろのろと歩き続け、私たちは遂に談話室の前へと辿り着いてしまった。中からは人の気配。お父さまが私たちを待っている。

「……ほんとに行く？」

「呼ばれた以上、行かねばなるまいよ」

「また牢屋に入れられるかもしれないわよ」

「…………本当に行くのか？」

「呼ばれた以上行くしかないでしょ」

　私たちは半笑いで顔を見合わせると、談話室への扉を押し開けた。

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