第14話 目覚めたら
「ーーん、おかあ、さま?」
「ああ良かったクロエ! このまま目を覚まさなかったらどうしようかと……!」
半泣きのお母さまと、更に強く体を押し付けようとする白兎たちを制しつつ、私はゆっくりと身を起こす。
そこは屋敷の談話室。暖炉には赤々と火が燃えていて、部屋中に何人もの警備兵たちが配備されていた。
な、何事?
「お母さま、これは何の騒ぎなの?」
「ショックで覚えていないのですか? 可哀想に……よほど怖い思いをしたのでしょう」
そう言うと、お母さまはとても優しい手つきで私の髪を撫でる。
滑らかで柔らかい手。
私の中で膨らんでいた不安がゆっくりとすぼんでいくような心地よさに、私はゆっくりと目を瞑る。
「『召喚の儀』を終えた後、あなたはーー恐らく最低クラスの低級召喚獣のスライムを召喚してしまったショックでーー気を失い、部屋へと運ばれました」
気を失った原因はともかく、そうだろうなという予想はついていた。
私は黙って頷き、目線で先を促す。
「家族みんなでしばらく付き添っていましたが、お父さまはあなたのこれからの生活に必要な手続きに、お兄さまは騎士団からの招集に出かけて行き、私も侍女に促され休憩を取ることにして、侍女を残し、あなたの部屋から引き揚げました」
お母さまはここで言葉を切り、眉を寄せ、悔しそうに唇を噛んだ。
「その後しばらくしてから、あなたの部屋から凄まじい悲鳴が聞こえーー」
恐らくエネルギーがギルバートに変身した時のものだろう。神様見習いも「物凄い悲鳴」だったと言っていた。
「警備兵と共にすぐさまあなたの元へ駆けつけました。
そしたら、気絶しているあなたの側に、#見知らぬ不審な男__・__#が立っていてーー!」
……えっ?
「警備兵に命じ、捕縛しました。
男は何やら困惑した様子で弁解めいたことを喋っていましたが、侯爵令嬢の部屋へ忍び込無用な男のいうことに耳を貸す必要はありません。問答無用で捕縛です、捕縛!」
「えっ、あの、お母さま?」
「訳のわからないことを言っていましたね。
『自分はグラビティウォール王国騎士団の者だ』
とか
『クロエ嬢に聞いていただければ分かる』
とか。
挙げ句の果てに、
『私はクロエ嬢の召喚獣だ!』
とか言い出して。怖いわね、本当に最近どうなっているのかしら?」
……あー。
「お、お母さま。その方は今どこに……?」
「我が家の地下牢ですよ。もうすぐ監獄からお迎えが来ますからね、安心しなさい」
あのね、お母さま。
「その人、私の召喚獣ーー!!!」
……その後、私の必死の弁護の末に彼は釈放された。
されたものの、突然牢屋にぶち込まれた彼はすっかり拗ねてしまって、その後しばらく口をきいてくれなくなってしまったのであった。
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