第5話 行くわよ……

 その後やってきた侍女に朝の支度を済ませてもらい、食堂へと降りていく。


 前世の記憶が戻ってから家族と会うのはこれが初めて。一応、こちらで過ごしたこれまでの記憶も保持しているとはいえ、やっぱり少し緊張するな……。



 香木でできた扉の前に立つ。6歳の私にはそれがとっても大きく、重く、どうしようもない壁のように見えた。

 分厚い扉に遮られて声こそ聴こえないものの、向こう側に人がいることは、気配でなんとなくわかる。


 ……お腹が痛くなってきた。



「ね、ねぇ。私、今日は朝ごはんいらないかなーって……」


「だめです」


 手近な侍女にへらりと申し出るも、ぴしゃりと却下された。


「朝ごはんは1日のエネルギー。食べないと本日の召喚の儀にも差し障りますよ!」


「ぐぬ……」


 うちの侍女はいつもこれだ。主人らの健康と安全にとにかく目がない。



 とはいえ。


 彼女の言う通り、召喚の際に朝食抜きが障ったら困る。家族にはいずれ会わなくてはいけないし、こちらとしても召喚失敗のリスクを抱えてまで彼らに会いたくないわけではない。



「…………よし」


 大きく息を吸って、取手に手をかける。

 それの冷たさに惑いが生じる前に、思い切って押し開けた。



 どうにでもなれ。

 ええい、ままよーー!

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