第9話 水着的お風呂回
大変おまたせしました。
あらぶっていたpcも落ち着きましたので、更新を再開します。
……突然のブルーバック、怖い。
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さて、無事にダンジョンを開けることができたわけだが、すぐに何かが変わるわけでもない。ゴブリンが帰ってくるまでにやれることをやるとしよう。
「と言うわけでイリスさんや、マイルームの拡張・改造を行いたいんだが……、ここの操作でいいんかね」
タブレットの【マイルーム】ボタンを指さしながらイリスに問いかけると、彼女は曖昧に頷いた。
「そこでいいですけど……。現状、拡張等は不可能ですね」
「ダメなのかよ! なんでさ!?」
「何でも何も……。ご自分の目で確かめて下さい」
イリスに促されるままに、【マイルーム】ボタンをタップする。すると現れたのは、おそらくマイルーム全体を表したであろう図――トイレ付き介護用ユニットバスと記されている。結構でかい――と、その横にはリストで【ワンルーム】、【トイレ】といった、おそらく設置可能であろう施設の名前。だがそれらには赤く斜線が入れられている。そして右下で赤く点滅する【Cap:10/5】の文字だった。
「Cap……、ってキャパシティか。10/5ってキャパシティオーバーしてるじゃないか」
「Exactly。その通りです。今設置されている施設、トイレ付き介護用大型ユニットバスのキャパシティが大きすぎるため、他の施設を設置することができないわけです」
「……ちなみにキャパシティを上げる方法は?」
「それはもちろん――」
「――あーはいはい、ガチャですね」
俺に言葉を取られたからか、イリスが少しむくれる。
そんな顔するなって、むしろ膨れたいのは俺の方だわ。何でもかんでもガチャにしやがって、チャラ神のやろう……。
「……よしっガチャを引くぞ!」
パンッと膝をたたいて宣言する。うだうだとチャラ神に対する文句を考えていても仕方がない。
せっかくダンジョンを開通させてデイリーガチャを引けるようになったんだ。気分転換にガチャを引こう。
宣言する俺を見て、イリスが怪訝な顔をする。
「……どういう思考でその結論に至ったのでしょうか」
「何? イリスさん、何か言った?」
「いえ、特には……。それよりもも早く引いてしまいましょう」
「そうだな」
イリスに肯いてデイリーガチャをタップする。
画面上のコインが回転して、表になったのは見知らぬ硬貨。
……ハズレか。
現状、現代の物が手に入れられる唯一の手段は、デイリーガチャでワンコインガチャの方を引き当てるしかない。だからこの大銅貨ガチャだとはずれなんだよなぁ。
ま、いっか。タップと……。
以前と同じように、ピロンという軽い音とともにすべてが画面に現れる。
「え~、なになに」
ポセットエール
歯木
魚介の燻製
食器セット
果物セット
桶
エキメッキ
ライトジェム
下着
シャツ
う~~ん。何か面白そうなのも含めて色々出てきたぞ。
とは言え、名前だけじゃよくわからんな。よし、こういうときは……。
「教えて、イリスえも~ん」
「もう、なんだ……、こほん。なんですか? マスター」
ちっ、おしい。イリスって以外とノリがいいから、うまくいくかと思ってたのに。
「な、ん、で、す、か、マスター。早く用件を言って下さい。もし用もないのに呼んだんだったら……」
「呼んだんだったら……。ごくり」
「地球破壊爆弾の刑に処します」
イリスはスッと表情を消して言った。
……なんでそこで真顔になるんだよ。こえーわ。
「で? 結局要件は何ですか?」
「あ、ああ。名前を見ただけじゃ、どんな物かわからない物がいくつかあってさ。それを教えてもらおうかと思って……」
「ああ、なるほど。それでは――」
そう言ってイリスは長々と説明してくれた。
……いや、作り方とか説明されてもしようがないからな、イリス。
まぁ、簡単にまとめるとこうだ。
ポセットエール、場所によっては飲料水代わりにのまれることもあるお酒。アルコール度数は低い。
歯木、歯ブラシ。
エキメッキ、地方によっては主食のパン。
そして最後にライトジェム。これは使うと三時間くらい灯りのともる魔道具らしい。ちなみに使い捨て。
最後の一つ。これを聞いたときは、内心小躍りしたもんさ。だって魔法だよ? 単なる灯りとは言えさ。とはいえ、続くイリスの一言で現実に戻されたんだけどな。
「――ただし、こちらのライトジェムの起動には魔力が必要です。この世界の人類は子供でも扱えますが、マスターは……」
そう言って顔を伏せるイリス。
「もしかして使えないとかか……」
「ええまぁ。端的に言うと……」
なんだよそれ。せっかくファンタジーな世界にきたんだ。ちょっとは魔法って物に期待してただけに残念感がぱないな。
――って、待てイリス。一見悲しげに目を伏せているように見えて、その実こいつ肩をふるわせていないか?
「――おい、笑ってるだろ」
「そ、そんなことはないですよ……。ただまあ、わかりやすく気落ちした姿を見せるマスターが面白いなぁ、と」
「……こ、こいつ。本音を隠しもしやがらねぇ」
「それで、ゴブリンが帰ってくるまでまだ時間がかかると思うのですが、その間どうします? ダンジョンの拡張案でも練りますか?」
ふと、真面目な顔になってイリスが聞いてきた。
「いや、特にそんな予定はないよ。……そうだな、せっかく風呂付きの部屋があるんだ。風呂にゆっくりつかってゴブリンが帰ってくるのを待ってるよ」
俺の答えを聞いて、イリスが「まじかよ」みたいな顔をするが、そんなの関係ねぇ。
そもそもダンジョン構造物がガチャ排出なんだ。計画の立てようがないじゃないか。それなら、来たるべき時に備えて英気を養ってた方がましってもんだろう。
……そうだ! 風呂と言えばさっき桶が手に入ったな。これってサイズ的にナーネの浴槽の代わりにちょうどいいんじゃなかろうか。
そう思い、その旨をナーネに聞いてみると、
「なー」
元気よく手を上げて返事をしてくれた。オッケーって事かな?
それじゃあまあ、リアライズした手桶にお湯を張ってと……。
「なーーー!」
張ったそばからナーネが突撃して、ざぶんとお湯につかりやがった。おいおい熱かったらどうするんだとも思ったが、ナーネの様子を見るとどうやら大丈夫そうだ。
「な~~~」
いかにも気持ちよさげに手桶の中でたゆたっている。
「ほ~~~」
ふと隣を見ると、風呂につかるナーネの姿を満足げに見詰めるイリスがあった。
「あ、ナーネが服を着たまま、お風呂に入っているのは、種族特性による物ですからね。決して林檎基準に配慮したわけではないですよ」
じとめで見る俺に気づいたイリスが、何をごまかそうとしたのか早口でそんなことをのたまったが、誰もそんなことは聞いてねぇよ。
と言うか林檎基準って何だよ。もしやこのタブレットが林檎製だとでも言うつもりか!?
……まあいい。珍しくわちゃわちゃしてるイリスはほっておいて、浴槽に俺用の風呂を張らないとな。
とは言え、浴槽がかなり大きいせいか、お湯がたまるまで結構時間がかかる。その間に何かできることはないだろうか……。
……そうだ。洗濯でもするか。
昨日の俺の下半身は緊急事態だった。最終的にぎりぎりセーフだったわけで、水門がからあふれたわけではない。すべて準備をし終えてから水門を自分の意思で開いただけである。
なので別に何が汚れているというわけではないんだが……、それでもまあ、下着を洗濯したいんだよな。
ふむ。ちょうどいい具合に、昨日デイリーガチャでミニ洗濯機が手に入ったからな。使わない手はないだろう。
ああそうだ、一応洗濯機を取り出す場所も考えないとな。
念のため風呂場の隅まで行ってリアライズをする。
――その瞬間光とともに目の前に現れたのは、プラスチック製の、色はピンクでちょっとファンシーだが、それはまごう事なきミニ洗濯機だった。
……ただし手のひらサイズの、とつくが。
「ど、う、し、て」
がくりと膝をつく俺にイリスが追い打ちをかけるかのように言った。
「どうしてもなにも、ミニ洗濯機をリアライズしたからミニ洗濯機が出てきた。ただそれだけのことです」
「でも、ミニ洗濯機っていっても、タオルとかスニーカーとか個別で洗えるぐらいの大きさはあるはずじゃないか!」
いや、あったはずだ。俺通販サイトで見たことあるもん。
「確かにそういう物もありますね。ですが、そういった物がワンコインで買えるとお思いで?」
そ、そうだった。これワンコインガチャだった。
「ちなみに世の女子は、それを使ってメイク道具を洗うらしいですよ。マスターに必要かどうかは別として、よかったですね」
うなだれる俺に向かって、さらに死体蹴りをするかのようなイリスの発言。
ええい、わかってるわ。悪い意味でそんな物が必要な顔じゃないって事はよ。
「いえ、さすがにそこまでは言ってないのですが……」
「ん? 何か――」
イリスが何か言った気がして、それを問いただそうとした時、突然ナーネが話しかけてきた。
「なの!」
ミニ洗濯機をぺちぺち叩いている。どうやらこいつに興味津々らしい。
……ふむ、どうせならナーネの前で実演してみるか。そのまま削除するよりは、その方がミニ洗濯機への供養にもなるだろう。
「こいつはな、この中に水を入れてここのスイッチを押すと、中の水がぐるぐる回るんだ。こんな風にな」
そう言ってスイッチを押すと、ミニ洗濯機がウィーーンといった音とともに回転し始めた。
……これ、思った以上に勢いがあるな。とは言えまぁ、手のひらサイズの洗濯機。さすがに下着は洗えないよなぁ。仕方ない風呂入ったあとそのお湯で洗うか。
そんなことを考えて目を離したその時、ナーネが大きな声を上げた。
「なのっ!」
振り返るとナーネがミニ洗濯機に足を突っ込んでいる。慌てて引き離そうとするが、ナーネには首を左右に振って拒否された。
どうやら水流が足に当たって気持ちがいいらしい。
「な~~~の~~~」
ナーネは大変ご満悦である。もし成人がやったなら、お茶の間にお見せできなくなるくらいにはご満悦の表情である。
ちなみにそんなナーネを見るイリスも、結構ヤバめだ。表情は変わらんが何かオーラがやばい気がする。
……見なかったことにするか。
まあその、なんだ……。気に入ってもらえて良かったわ。
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