第3話 異世界調査
俺は再度、御朱印帳のゲートをくぐって異世界に渡った。
相変わらず周囲は高い木々に囲まれている。先ほどと同じ場所に繋がっているようだ。
ふと空を見上げると大樹に赤い実がなっているのに気がついた。
リンゴか……? でもリンゴの木ってもっと低くなかったっけ?
普通の果樹園で見たリンゴの木は背が低かった覚えがある。確か人の背丈の倍くらいだ。それは品種のせいもあるのだが、神社に生えてる杉の木よりはるかに高いというのは明らかにおかしい。
本当にリンゴなのだろうか? 確かめてみたい。もしあれがリンゴならばご飯の代わりに食べて食費を浮かすことができる。
問題はどうやって高いところになっているあの実を採るかだ。木を切り倒せば確実なのだが、ノコギリなんて持ってない。家にある刃物といえば包丁と果物ナイフくらいだ。
とりあえずアパートの台所から果物ナイフを持ってきた。もちろんこいつで木を切り倒せるわけがない。一か八か投擲して赤い実のついている細い枝を切り落とすつもりだ。
肩に自信があるわけではないが、ダメ元でやってみよう。
果物ナイフを構えて赤い実の根元の枝一点に狙いを定める。そしてナイフを投げつけた。
手元から離れたナイフはぐんぐんと加速しながら上昇していく。次の瞬間には赤い実の根元に見事命中。赤い実がひゅーんと落下してきた。
なんだ今のナイフの動きは?! 狙ったところに吸いつくように飛んでいったぞ。
ナイフを投げた感じだと狙ったところまで届かないと思ったのだが……。
目の前に赤い実がぽとっと落ちた。その見た目は完全にリンゴだ。
拾って匂いを嗅いでみる。
「くんくん、これはリンゴの香りだ」
見た目もリンゴ。匂いもリンゴ。残るは味だな。
シャクッと赤い木の実にかぶりついた。
「あ、リンゴだこれ」
木の実の味は完全にリンゴだった。シャクシャクと気持ちのいい歯ごたえで、噛みしめるとじゅわーと果汁が溢れ出てくる。これは美味しい。
お腹が空いていたので、すぐに食べ終わってしまった。
美味しかったがリンゴ一個食べたぐらいじゃ満足できない。空を見上げると新緑の葉の海の中に無数の赤いリンゴが生っていた。
俺はリンゴのそばに落ちていた果物ナイフを拾い上げた。そして、もう一度リンゴに狙いをつけて投げ放った。
またしても命中。リンゴがぽとりと落ちてきた。
さらに続けて三回投擲した。そのどれもが命中。リンゴが三つ落ちてきた。
この果物ナイフ……明らかにおかしい。大リーガーの投手でもない俺にとってはナイフをあそこまで届かせること自体困難なはずだ。その上、百発百中だなんて。
考えられることは……あれだな。
俺の視線の先にはこの世界と現実世界とを繋ぐゲートがあった。
二冊の御朱印帳で作られた現実世界と異世界とを繋ぐゲート、そうだな……『
ぐぅぅ~っ、とお腹が鳴った。考えるのは後にしてリンゴを食べるとするか。
4個のリンゴを食べ終えるとさすがにお腹が一杯になった。おまけに眠気も襲ってきた。
この異世界で試してみたいことは沢山あるが、明日も仕事だ。今日は眠ろう。
俺は少し後ろ髪を引かれる思いでアパートに戻った。
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