第49話 いたずら
どさり
トラリオンがまた部下を切り捨て。
部下が血を噴き出し、絶命。
大分減ったかな。
無論、部下同士でも斬り合っている。
どんな幻を見ているんだろうね?
まともな幻みたいで良かった。
スピカは、心底思う。
幻は、その人物の記憶や知識を元に作られる。
千差万別の死の演舞。
一度、何を見ていたのか、服を脱ぎ始めた男がいて困った。
あれはどんな戦いをしていたのか……
「終わり、だね」
生存者は、トラリオン1人となった。
戦いの幻は終わり、後は自分を苛む適当な幻に。
スピカは、トラリオンにゆっくりと手を伸ばし。
「ん……」
そのままトラリオンの
それとは別に、個人毎に専用のレコードが有り、先程レオを再生したのもそれだ。
一般的には、同じ事象に関しては、別個の個人の間で差違は無いのだが。
「うわ……レオがやられる訳だ……この人強いんだ……その割におバカだったけど」
相手の手の内が分からないのなら、最大の警戒をすべきで。
特に、神秘をかけられる事は、常に警戒をしておくべきだ。
正しい対処法は、緊急離脱。
それを、疑いもせずぬくぬくと幻を見ているのだから。
「何なの?
神秘は、天災。
関わらないのが、唯一の正解。
もっとも。
神秘を扱うのは、幻獣、妖精……人目を避け、到達困難な地に棲まう存在。
それを
「んー……ここで……こうで……」
ラピスは、一通り情報を抜き出すと……
トラリオンの
過去の事実の改竄。
次男として生まれ。
長男……後の王に仕え、私心は無く、民の為に、国の為に、兄の為に……尽くした人生。
若い頃に経験した、恐怖と諦念……それが、トラリオンの原点であった。
「んっと……戦闘狂でぇ……実は悲劇が好きで……当然兄には嫉妬するよねぇ……それからあ……復讐の時を狙ってて……」
敵国の弱体化。
それは、ロマニアの利益になる筈。
またちょっかいかけられても困るし……
最凶の殺人鬼となって、暴れて貰おう。
洗脳されても、治療すれば良い。
虚偽を否定、真実を解き明かし……
もしくは、最高の回復手段。
だが。
過去を改竄される、これはどうしようも無い。
それは、事実なのだ。
それを書き換えてしまえば、それが全てとなる。
「ん、終わり」
スピカが、ぽん、とトラリオンの背中を押す。
大好きなレオを傷つけた、ささやかな
「過去の事実なんて、自分だけのもの。過去の事実なんて、一片の価値も無いのです」
スピカは、ドヤ顔で呟いた。
ハーフ・アンド・アーク 赤里キツネ @akasato_kitsune
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