第35話 部活対抗戦

「面白い仮説ですが、外では言わない様にして下さいね」


リブラが困った顔で言う。

王貴血者アークとは、信仰の対象なのだ。

賤混者ハーフと同じなどと言えば、問題になるだろう。

もっとも、天使、霊獣、神獣、神……全て神聖な存在なので、それはそれで信仰は揺らがない気もするが。


「勇者の死因に関しても、だ。王家が隠そうとするのだ。何かよからぬ事になるやも知れぬ」


俺の身は既に十分危ういがな。

シリウスは心の中で涙する。

王本人の前で、ルピナスとシリウスは、勇者の死因を聞いたのだ。

王のお気に入りであるルピナスはともかく、シリウスはいつ殺されても不思議ではない。


レオが、難しそうな顔をしている。


「……全然ついていけなかった……つまり……?」


「えっと……結論としては、勇者は魔王と相討ちにはなっていない、けれど、外で言いふらすのはやめよう……かな?」


スピカが要約する。


「なるほど……まとめると」


レオが、ぽつり、と語り出す。


「勇者、アネモニ、クレマティス、の3人は、魔王の討伐に成功。無事に魔王城を出た。途中、サマイルの村で不名誉な事が起きた。一夜にして全滅した悲劇の村サマイル、勇者の事件に巻き込まれたか、または不名誉な事の隠蔽の為に王が兵を使って口封じをしたか……魔王残党により殺されたと発表。そして、ハーレム法案が発表……」


「適当に混ぜるな」


レオの話に、ルシフがツッコミを入れる。


「後、勇者、アネモニ、クレマティス、の3人は、三角関係にあった」


「きっとそうですよね」


レオの補足に、スピカが頷く。


「……あああっ」


不意に、リリーが叫ぶ。


「……どうした?」


ルシフが尋ねる。


「部活対抗戦……締め切りが……」


「過ぎましたね」


リリーの絶望の呻きに、リブラが冷えた声で言う。


「……まさか……リブラ……これが狙い……」


「さて?まあ、予想外に大きな蛇が出てきて驚いてはいますが」


「ねえ、リブラ。遅れての提出は……」


「駄目です」


当然である。

模範たるべき生徒会役員が、例外行為など許されない。


がっくり。

リリーが項垂れた。


--


情報は集まり始めたが、実際に何があったか……推測する材料は無い。

当時の状況を知っている、大人に話を聞こう、そういう話になった。

それで、口の硬い人……聞いても問題が無い人の候補を挙げ、尋ねる事にしたの……だが。


一人目の人物は、ルシフの想定外の選択肢だった。

スピカの親。


賤混者ハーフは、孤児が多い。

もしくは、生きていても正気を失っている場合が殆どだ。

魔物に犯される……それは、壮絶な体験なのだから。

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