第34話 鼻が効く

「俺もその場には同行した──まず、リリー王女の言っていた、クラテス王の動揺……あれは事実であった」


「でしょ!」


リリーが喜色を見せる。


「クラテス王から得られた情報……あくまで、雰囲気、というだけで、確たるものが有る訳では無いのだが……」


「いや、それでも貴重な情報だ」


ルシフが促す。


「勇者の死因は、恐らく魔王との相討ちでは無い。そして、無事に魔王城を出立した。そして……サマイルの村で何かがあった」


「……情報が凄く濃いですね。悲劇の村サマイル……あれに勇者が関係していたというのですか……?」


リブラが困惑の声音で言う。


「凄い……シリウスさん、何時の間にそこまでの情報を?!」


ルピナスが目を丸くする。

いや……その場にルピナスも居た筈なのだが……。

シリウスが困惑する。

あからさまに怪しかったが、本当に気付いていなかったのか……?


だが、正直にそう言っても、傷つくかも知れない。


「俺は賤混者ハーフ、鼻は効くのでな」


「……格好良い……」


ルピナスが目を輝かせる。

やめろ、そんな目で俺を見るな。

俺にそこまでの能力は無い。


シリウスは、心の中で呻く。


「次は、俺か。俺も……大した情報は得られなかった。勇者は、幼馴染み2人と共に、3期生徒会長を務めた……まあ、王族というのも理由の1つだと思うが。日記を見た限り、日常生活は、それなりに楽しかった様だ。先程スピカが主張した、三角関係、というのは可能性が有ると思う。あとは……」


ルゥをちらり、と見て。


「これはルゥからの情報だが。勇者は死んだ。だが、勇者の死と、魔王が倒された時期にはずれが有り、魔王が倒された数日後に勇者は死んだらしい。ここから考えて、相討ちの可能性は低そうだな」


付け加える。


「なるほど。本格的に、勇者と魔王の相討ち説が怪しくなってきましたね」


リブラが頷く。


「最後は私ね!」


リリーが胸を張って言う。


「私が調べたのは、王貴血者アーク賤混者ハーフに関して……」


え。

ルシフは耳を疑う。

いや、勇者の事を調べてない雰囲気はあったが、本当に違う事をしていたのか。


他の面子も、怪訝な顔をする。


「結論としては、王貴血者アーク賤混者ハーフも同じ……婚姻に問題は無い、そう思うの」


「……リリー様……流石にそれは……」


ディアナが、困惑した様な声を出す。


王貴血者アークの定義は、秘蹟を扱える事。秘蹟を扱える存在と言えば、王貴血者アークを除けば、天使、霊獣、神獣、勿論神……つまり、秘蹟を扱える存在と、人間との混血……または、その子孫が王貴血者アークなのよ」


「……血統により遺伝……確かに、辻褄は合うな」


ルシフが頷く。


……あれ?

何で俺は秘蹟を使えるんだ?


……まさか、聖女と魔物の混血とか……まさかな。

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