第33話 一片の情報も得られません

「ジャンル……『三角関係』が消えました。これは、他国にはない、ロマニア特有のジャンルだったのですが」


「……さもあらん。『三角関係』は、多重婚が認められていないからこそ起きる事。多夫多妻が認められているなら、起きぬ。まあ、時代設定を過去にする事で成り立たせている作品も有るが」


「逆に、『ハーレムもの』は国から補助金が出るし、学校の教材にもなっていますからね。今や、圧倒的に『ハーレムもの』が優勢……そして……鬼才、ムラサキ先生は、この学園のOG……知っていましたか?」


「むむ……ムラサキ先生の著作物は読んだ事が有るが、OGという事は初耳であるな」


シリウス、文学に詳しいのだろうか。

ルシフも、なんとなくは分かるものの、いまいち分からない。


「そのムラサキ先生は、勇者と同期……そして、在学中、禁書をしたためていました」


「ああ、あれですか。禁書架に入れるか迷ったんですよね」


ルゥが懐かしそうに言う。


ごくり、ルシフは生唾を飲む。


「その名も、『生徒会が征く』……学園の日常生活をおくる……それだけの内容ですが、極めて危険な妄想が……勇者リオンに対し、炎帝アネモニと、神手クレマティスが熱烈アプローチ……三角関係やすれ違い……恋のドタバタを描いた、コメディーに仕上がっています」


「まあ、普段からそんな感じでしたしね」


それは、本当に創作なのか?

ルシフは訝しむ。


「つまり……私とレオの結論は……勇者と、仲間2人は……三角関係にあった、という事なんです」


「……それと、叔父様の死に何の関係が……?」


リリーのツッコミ。


「関係無いですね……」


ぱたり


スピカの耳が垂れる。

関係無かった。

面白い話ではあったが。


「次は──リブラか?」


リブラとディアナの話には、期待が大きい。

トリに取っておくのも良いが、途中に持ってくるのも悪くない。

そう考え、ルシフが水を向ける。


「残念ながら……特筆すべき内容は有りませんでした」


ディアナへの感情を抑えるのにそれどころでは無かった……。

リブラは、バツが悪い思いをする。


「同じく、何も言うべき事が有りません」


リブラさんは、物事を知り過ぎていて何も目新しく感じられなかったか、真相を知っていて、敢えて黙っているか……

私は純粋に、リブラさんに溺れていて……本当に恥ずかしい……


ディアナは、魂で涙を流す。


「そうか……」


ルシフが頷く。

この2人が何も見つけられないのだ。

結局は、勇者は魔王と相討ちになった……それが真実という事か。

それでも……例え偽りでも、色々考えるのは楽しいとは思う。


「私は、王様に謁見したのですが……残念ながら、一片の情報も得られませんでした」


ルピナスの報告。


??!


シリウスは心の中で叫び声を上げる。

意図的に情報を秘匿……いや、俺に言えと言う事か……?

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