第32話 語られざる従者

「ともかく……揃ったんだ。もう一度初めから、みんな話してくれ」


途中からなんてごめんだ。

ルシフはそう思う。


「そうですね……では、私達が調べた内容を」


スピカが、話し始める。


「私達は、ハーレム法に着目しました」


スピカは、目を伏せ、


「ただ、この法律自体に不審な点は有りません。魔王軍による被害、人口の減少……その解決手段として、極めて自然な結論だと思われます。当時の感覚とかけ離れていた為、騒ぎにはなりましたが」


そう。

ハーレム法は、妥当な選択。

他国では昔から一般的で……むしろ、ロマニアが異常だったのだ。


「それで、何か結論が有る訳では無いのですが……同時代、別の情報も入手しました。勇者のパーティー……勇者の幼馴染についてです」


勇者のパーティー。

それは──


「一人は、炎帝アネモニ。火属性魔法を第拾弐階位トゥウェルフスまで扱った……そんな記録すら有ります……あくまで伝説、真偽の程は定かでは無いですが」


「懐かしい……純人間ピュアの身で、第拾弐階位トゥウェルフスに至ったアネモニ……真っ直ぐ過ぎる所はあったけど、可愛い娘でした」


ルゥが、目を細め、呟く。

当時を知る者の証言が出た。

まあ、20年も経っていないのだから、人間でも知っている者は多いだろうが。


ルシフは、心の中で両手を上げる。

ルシフが扱えるのは、火属性魔法は第拾階位テンスが上限……第拾弐階位トゥウェルフスともなれば、絶対守護イージスでも防げるか怪しい。


「二人目、神手クレマティス。神聖魔法を第拾弐階位トゥウェルフスまで扱い、その威力は、勇者が扱う秘跡すら凌駕したとか」


「……レオンも強かったんですよ?ただ、あの二人が特別だったんです。学園始まって以来の才媛、あのクラテス王すら霞みます」


ルゥが、苦笑しながら言う。


「炎帝に神手……勇者の快進撃を支えた……というか、四天王リリスの時には、殺されかけた勇者を助け、リリスを2人だけで討ち破ったとか」


ルシフが敬意を込めて呟き、


「そうなのですか?初耳です」


スピカが小首を傾げる。

おっと、また姉弟子の創話?かも知れない。


「そういえば、強さの割に、叔父様の逸話ばかりで、他の2人に触れた話があまり無いわよね」


リリーが小首を傾げ、


「それは当然でしょうね。王族は讃えられ、従者は語られない。そういうものです」


リブラが淡々と言う。


「そして……話は変わりますが……」


スピカが、再び語り出す。


「勇者の死の前後で、小説のジャンルに、大きく変わった点が有るんです」


「ふむ?」


シリウスが促す。

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