第16話 奉仕

「あ、ほら、うちの先攻ですよ。レオがボールを持っています」


スピカが指をさす。


レオは、普段は、魔法を使わない。

ただ、純粋な身体能力だけで競っている。

それでも、学園トップクラスの戦闘能力。


「始め!」


審判の叫びと共に、レオが駆け──


きゃあああああああああああ


会場に巻き起こる、割れんばかりの声。

レオに対する声援だ。

男女関係無く──待て、相手の学園の応援席でまで上がってるぞ。


「相変わらずの人気ね、レオは」


くすり、リリーが微笑む。


しなやかに、水が流れる様に、レオが相手チームを躱して行く。

そして。


「タッチダウン!!」


審判の声。


レオは鮮やかに相手のディフェンダーを躱すと、ゴールへと踏み入った。


わあああああああああああ


歓声、拍手……リュケイオンは、早速、ポイントを先取した。


--


「凄かったな、レオ」


試合は、レオの独壇場。

リュケイオンの他のメンバーは、何もしていない訳ではない。

敵をレオに近づかせない様にしたり、ボールをレオに誘導したり、レオの邪魔をしない様に動いたり……そういった戦術だ。


「みんなのおかげさ……それに」


レオがリブラを見ると、


「リブラが司令官してた時は、もっと強かったんだ」


「生徒会の激務と両立できる訳がないだろう。指揮する立場であれば、試合の時だけ出れば良い訳でも無いしな」


リブラが呆れた様に言う。


「まあ、仕方ないわよね。生徒会は全生徒に奉仕する尊い仕事……激務でも、その犠牲は尊いわ」


リリーが頷く。


「いや、脈絡なく書記にした上、明らかに生徒会長の仕事を私に押し付けるキミが言うかね?」


リブラが半眼で言う。


「うん、決めたわ」


リリーが頷く。


「何をですか?」


スピカが小首を傾げ、


「ルシフ、此処にいるみんなで、部活を作るのよ!」


?!


「……リリー、話が見えない」


ルシフが呻く。


「部活よ。だって、私とルシフは、クラスが離れているから、一緒にいられない……ホームルームも、何度もサボれるものではないし」


サボって走ってきたのか。


「同じ部活なら、放課後集まるから、問題無いでしょ?部活って言っても、実際そこまで活動せず、駄弁るだけとかで良いのよ!」


「……生徒会役員としては、実態の無い部活等、許可できんがね」


リブラのツッコミ。


「レオは半ば幽霊部員とは言え、ウィザーズボールの正規部員だしな」


シリウスもツッコミを入れる。


「掛け持ちすれば良いでしょ!」


「そんな規定は無かったような……同好会ならともかく」


スピカもツッコミを入れ。


「まずは、生徒会にはたらきかけて、掛け持ちを許可させないと」


リリーが呻き、


「いや、あんたが生徒会長だよな」


レオが半眼でツッコミを入れた。

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