第12話 ザッファ

ルピナスとルシフは幼馴染。

付き合いは深い。

ルピナスの家は商家で、ルシフはルピナスの家に頼んで薬を売ってもらい、小遣い稼ぎをしている。

ルピナスに、ルシフに対する恋愛感情は無い。

ルピナスにとって、ルシフの存在が大きすぎるのだ。

崇める対象であり、恋心等は有り得ない。


やっぱり、嫁探しは都会だな。

ルシフは、改めて思う。


「ルシフ様が来られたなら、王女殿下の首席は、首席(笑)になりますね……短い天下でした」


「いや、どっちにしろ、Zクラスは凄い奴が大量にいたみたいだぞ」


レオとか、レオとか。


「でも、ルシフ様と同じ学校に通うのは、恐悦至極に存じます」


「俺も、ルピナスがいてくれて嬉しいよ。これからよろしくな」


ルシフは、笑顔でそう言った。


--


放課後。

ルシフとレオは、二人で、街の外にいた。

街道から外れた場所。

少々タガを外しても、迷惑はかからない。


「今度こそ、もっと本気でやってくれよ。この前の戦いは、あんまりだ」


「確かに、全力は出していないが。期待に沿えるかは分からないぞ?」


レオは強い。

恐らく、ルシフを除けば、単独トップ。

地元でも、勝てる奴がいるかどうか。

いやはや……流石、都会。


ひゅ


ルシフが、空間収納から剣を取り出す。



周りに建物は無いが、日は出ている。

寒くは無い。

まだ暑いという程でもなく。



「な、何をしたんだ??!」


レオが目を見開いて叫ぶ。


「……?空間収納から武器を出しただけだが、それがどうかしたのか?」


今ルシフが使ったのは、魔術、第参階位サード空間収納ポケット

詠唱不要で発動が早く、容量も大きい。

意外とお勧めの魔法だ。


ちなみに、時間属性と重力属性の複合属性、時空属性の第陸階位シクスにも類似の魔法がある。

魔術が使えない人は、そっちを使う道もある。


空間収納ポケット?聞いた事が無い……流石だね、ルシフ」


「いや、まだ何もしてないんだが……」


ルシフは困惑すると、剣を構える。

自作の、粗末な剣。


ザッファの牙を、イフリートの血とターレの滝で鍛え。

ユグドラシルから切り出して作った柄につけている。

都会の宝具達には比ぶべくもないが、店売りの叩き売り剣よりはマシだろう。


「うにゃにゃ……」


レオの超高速詠唱。

重力属性、第陸階位シクス重力剣グラヴィティソード

重力場を纏い、鋼鉄だろうが炎だろうが、豆腐の様に切る。

芯となる剣が必要等、欠点も有るが。


「私の剣を受けてみろ!」


ギンッ


重力剣グラヴィティソード自体は、ルシフの剣には通じないが。

その斬撃の疾さ、重さ、巧さ……常軌を逸している。


カッカッカッ


暴風の様な連撃。

魔力すら纏ったそれは、天災の如く。


認めよう。


レオ、お前は、学園最強……俺の……ライバルだ!

ルシフは、ここに来た直後の、つまらなそうという印象を恥じる。

ルシフの口角が、自然と上がる。


「な──」


レオが叫ぶ。


「何で、普通に受け止められるんだ??!分厚い鋼鉄ですら、安々と切り裂くんだぞ??!魔力すら通わせていないのに……!」


「ザッファの牙は、自然と霊力を帯びる。鋼鉄と一緒にされては、奴も浮かばれまい」


「何で伝説の竜神ザッファが出て来るんだああああああああ!」


激しい連撃。

いや、この剣の話だろ?

ちなみに、まだ生きている。

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