第11話 友人

「あっちの建物が生徒会よ」


「でかいな?!」


建物1つ、全部とは……

ルシフは、あ然とする。


「向こうが体育館。地下はプールになってるわ。今日は女子水泳部が使ってるわね」


うわ、見学したい。

ルシフはその言葉を飲み込む。


「案内としてはこんなもんだろ?早く街に行って遊ぼうぜ」


レオの提案。


「うむ、異存は無い」


シリウスも頷き。


「図書館とか、色々と省いた箇所がありますが、あまり多く紹介しても覚えられないですしね。切り上げますか」


リブラも頷く。


「ルシフさん、服とか足りていますか?良ければ見に行きません?」


スピカが尋ね、


「友人と買い物……憧れのシチュエーションね」


リリーがぽつりと呟き、


「生徒会長、私と何度か買い物に行きましたよね?!」


スピカが涙目で叫ぶ。


--


「これが、都会のスイーツというものか。素晴らしいな」


ルシフが、クレープに感嘆を漏らす。


「私も初めて食べたわ。王宮の料理より好きかも」


リリーが嬉しそうに言う。


「ここのクレープは特に美味しいんだよな」


両手に違う種類のクレープを持ち、レオが言う。


「甘い物は苦手だが、このチキンのクレープは素晴らしい」


シリウスが満足気に言う。


学校を出て、服や、雑貨、色々と見て回り。

屋台のクレープで一休み。

ルシフに、これからの楽しい学園生活を思い描かせるには、十分であった。


賤混者ハーフ王貴血者アーク

対極に位置する存在。

だが、ここにいるのは、ただの、年頃の子供達。

そこに垣根は感じない。


この幸せは永遠。

柄にも無く、ルシフはそう考える。


「明日も、明後日も。ずっと、こうしていたい」


皆同じ考えなのだろう。

リリーが呟く。


「会長、何を言ってるんですか。明日は生徒会棟に缶詰ですからね」


リブラが冷ややかに言う。


「しくしくしくしく……」


「あの……私も、できる限り手伝いますから!」


落ち込んだリリーを、スピカが慰める。


--


翌日。

授業と授業の間の休憩時間。

ルシフは、一人で歩いていた。


ふと思い立って、Zクラスがある棟とは別の棟を歩く。

そこで見慣れた顔を見つけ、声をかける。


「やあ、ルピナス。奇遇だね」


「え、ルシフ様?!何故こんな所まで……特別講義とか……それとも、何か余程の事件が……?」


「普通に学生として通える事になってね。貴族の方が推薦してくれたんだ」


「学生……?全知全能たる神の如き御身が、何を学ぶと言うのですか……?」


ばささ


ルピナスは、手に持った書類を取り落とす。


大袈裟過ぎる。

これだから、地元の人はちょっと苦手なんだ。

婆さんが偉大過ぎる……


ルシフは、心の中で大きな溜め息をつく。


「そんな事は無い。実際、Zクラスには、俺より強い奴が──」


「それは、ルシフ様が本気でないからですよね。勇者であろうが、魔王であろうが、御身の前では乳飲児」


「いや、どれだけだよ。流石に言い過ぎだよ」


ルシフは、愕然として突っ込む。


「あの……御身のお力を自覚して下さい。そうでなければ、壊してしまいます……」


「校舎か?確かに、やや強化が足りていないとは思うが……」


「何を言っているのですか。校舎ならまた建てれば良いのです。壊したら困るのは、この世界です」


「スケールでかいな??!無い、流石にそれは無い!」


ルシフが叫ぶ。

地元では神様扱いする人も時々いるが、ルピナスは別格だ。

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