第13話 決着

「……良いよ、見せてやるぜ!」


「?!」


レオが詠唱を──二重詠唱デュオ、しかも、第陸階位シクスの!

流石都会……多重詠唱アンサンブルは、非常に稀有な能力。

里でも、数名しか……。


オンッ


レオの後ろに光の輪。

重力属性、第陸階位シクス神舞光背エアリアル

無重力の動きと、圧倒的な質量の一撃──攻防一体の魔技。


「……マジかよ……」


ルシフは戦慄する。

このままでは……受けられない。


「地よ、水よ、火よ、風よ」


一行ワンセンテンスの短縮詠唱、4つ。


ボッ


ルシフの周囲に現れるは、4色の輪。


赤い輪は、火の属性魔法、第陸階位シクス火陣ファイアサークル

貫通力、瞬発力、といった勢いを強くする。


青い輪は、水の属性魔法、第陸階位シクス水陣ウォーターサークル

魔法防御力を上げる他、回復も行う。


緑の輪は、地の属性魔法、第陸階位シクス地陣アースサークル

物理防御力を上げる他、回復も行う。


紫の輪は、風の属性魔法、第陸階位シクス風陣ウインドサークル

移動速度を上げる。


それぞれ、他にも効果は有るが……4種同時使用がお勧めだ。


ガッ


「なっ……止めただと?!と言うか、何だその輪っかは??!」


属性陣を知らないのか?

俺の中ではかなり有名なのだが。

ルシフが訝しむ。


「もう……どうなっても知らないからなあ!!」


レオが叫ぶ。


「うにゃあああああああ」


超絶詠唱。


「ははは……」


ルシフが乾いた笑いを漏らす。


冗談じゃねえ……四重詠唱カルテットだと??!


周囲の場を歪め、距離を狂わせる、超重場ブラックフィールド

相手を束縛、回避を封ずる、重封ブラックシール

全て、重力属性魔法の第陸階位シクス


レオが、全力でルシフに向かって翔ぶ。


もはや、受ける事は不可能。


時間属性の第捌階位エイスで躱すか、時空属性の第陸階位シクスで躱すか……否。


決めたんだ。

正面からぶつかると。

相手を受け入れると。


躱すなど、断じて否!


ルシフは、レオをまっすぐに見つめ。


「ば……躱せ!!」


レオが目を見開き──


告げる。

天の理、侵すはいな

絶対なるは神のしるし


ルシフの口から紡がれるえいしょう


ルシフの差し出した右手、その先に……


光が──


絶対守護イージス


ルシフの最高対抗手段──攻勢概念の無力化。

第陸階位シクス


すと


音も無く、レオの全攻撃が解除。

衝突のエネルギーはゼロとなり、武器にかかった魔法も解除。

諸々の魔法も消失。

落下の衝撃すら奪われ、優しく地面に降りる。


そう。


これでは、片手落ち。


圧倒的力で、ねじ伏せる!


告げる。

醜悪なる存在もの、罪深き存在もの

その理、防ぐあたわず。

その牙、ただの災厄なれば。


ルシフの右手に、くろが集まり。


「お……おい??」


レオが涙目で、重力場の盾を展開。

1枚でも隔世の力を持つ、最強の盾。

それが都合4枚。

全身全霊で成し遂げた、奇跡のわざ


それを──


断罪の刃ジャッジメント


くろの奔流が、豆腐を貫く様に通過。

そのまま軌道を変え、レオの紙一重横を通り過ぎる。


「ひっ……」


無論、意図的に外したのだ。


「こ……降参だ。完膚なきまでに、力を見せてもらったよ」


レオが、へたり込んだ。

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