第3話 第一席

「あ、その、やっぱり、周囲とは垣根無く接したいですよね!」


「う、うむ」


ルシフが頷く。


「あの、目的、というのは何でしょうか?」


「ああ、嫁探し、だな」


「嫁探し……ですか?」


「ああ。才に溢れ、見目良く、善き性格の女性。学園であれば、数多く在籍していよう。そういった女性を故郷に連れ帰り、娶りたいんだ」


「ハーレム法……」


リリーが呟く。

通称、ハーレム法。

現国王が、大戦の後に出した法律。

双方の同意がある場合、男性は複数の女性を、または、女性が複数の男性を娶る事ができる。

大戦で疲弊した国を救う奇策。


「無論、誰でも良い訳では無い。地元に連れ帰らなければならないからな。貴族の跡取りとか、ややこしい女性は駄目だ。次女以降で、出来れば末子に近い方が良い。貴族より、裕福な平民の方が好ましいな」


「なるほど」


リリーが頷く。


「そういう意味でも、首席云々は無しだ。国に恐れられ、捕えられるのも問題だが……利用しようと、色々束縛されるのも困る。俺は地元に帰り、お婆さんの仕事を手伝う、そんな地道な生活を送るつもりなんだ」


「そうでしょうね」


リリーが頷く。


「まず、難しいかも知れませんが……体術、そして剣技……一級の力です。それだけでも目立つでしょうね」


「確かに、隠すのは難しいだろうな。まあ、なるべく頑張って隠さねば」


「次に、使えるのなら魔術。これは、第壱階位ファーストでも脅威の力」


「魔術は便利だからな。第壱階位ファーストが使える、そう申告するよ」


魔術、第壱階位ファースト癒傷キュア解毒ディスポイズン

第陸階位シクスの神聖魔法に匹敵する性能を持つ。

使えた方が便利だろう。

うん、回復キャラで売り込もう。

ルシフが心の中で誓う。


「そして、属性魔法ですね。これは、第伍階位フィフスを使えれば、Aクラスレベル……今年の1年には、才ある者がいて、第漆階位セブンスの火魔法を行使します」


なるほど。


「そいつは、火魔法以外はどのレベルで使えるんだ?」


「複数属性を同時行使なんてでき──できるんですか?!」


「や、やだなあ。何を言ってるんだ。都会は凄い所だから、ひょっとしたら使えるのかなって思っただけだよ」


あぶねー。

そうだな……火魔法、第参階位サードって事にしておくか。


うわ、リリーの目が半眼。

絶対疑われてるよこれ。


ルシフは心の中で汗を流す。


「属性魔法は、地水火風エレメントだけか?」


「他にあるのですか?」


「いや、ほら、都会だから、さ」


月属性とか、光属性とか、時空属性とかアウト、と。

ルシフは心の中にメモをする。


「あ、あと……アオロ伯の御令嬢も、学園に通っていると聞いていてな。彼女に挨拶した後、彼女に色々と世話をして貰う予定で──」


「色々世話って何をする気ですか?!やらしいですね!」


「想像力豊かだな?!」


ルシフは溜息をつくと、


「アオロ伯の御令嬢は、流石にハーレムの対象外だ。さっきも言っただろう、権力者の娘とか、田舎に連れ帰れる訳が無いだろう」


「……結婚は、愛によって決めるべきだと思います。相手が持って生まれた身分により、差別するのは……あまりにも悲しいのではないですか?」


「キミ、さっき反対する側だったよね?!」


リリーはくすり、と笑うと、


「アオロ伯の令嬢、ディアナ様とは、面識があります。良ければ取り継ぎますよ……ただ、相手の迷惑も考えて下さい。ディアナ様は多忙の身、学園生活のサポートは、私が引き受けます」


「……確かに、ディアナさん程の身分なら、忙しいか……」


「はい。そして──」


リリーは、ルシフを見て、


「貴方が作るハーレムの第一席、私が座っても宜しいでしょうか?貴方が提示した条件、私なら完璧に満たしていますわ」


ルシフに劣らぬ、絶世の美貌。

ルシフと並んで歩けば、誰もが運命に定められた伴侶と思うだろう。


「ふ……窮地を救ったのが格好良すぎたかな。早速1人惚れさせてしまったか。良いだろう、リリー、キミを我がハーレムの第一席としよう」


風が強い荒野。

だが、ルシフの、リリーの鼓動は高鳴り。

寒さを感じる理由は無かった。


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初めましての方、初めまして。

他の作品を読んで頂いた方、お久しぶりです。

少し開きましたが、新作を投稿しました。

毎日更新は怪しいですが、ちまちまと続けていきます。


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