梨友視点:パート5

2人が話している間、私は恐怖に支配されており、ろくに内容も入ってこなかった。

今この場に立っていることでさえ奇跡に等しい。

でも瑠花ちゃんの言葉で安堵と幸せに包まれる。


「おいで梨友。」


あぁ、この言葉を待っていた。

1人でずっと耐えて耐えて耐え抜いてきた瑠花ちゃん。

私が絶対あなたを救うから。

犬のようにすぐさま瑠花ちゃんの元に向かう。

殴られるのさえ幸せだという思いと共に。

いきなり殴るのではなく私の頭を愛おしそうに撫でてくれる。

あぁ、瑠花ちゃん……。

そして殴られる。

前よりかは慣れ、1回目ならなんとか立って耐えることはできるようになった。


「瑠花……何して……。」


理解できないというような声を発する音亜。

当たり前だ。

お前に何がわかる。


「あなたと家族から受けてるストレスや苦しみを梨友は分かちあってくれるの。」


そうだよ、瑠花ちゃん。

私しかあなたの苦しみを分かってあげられないの。

今まで分かってあげられなくてごめんね。

その後悔を消し去ってくれるようにもう1回殴ってくる。

さすがに2回目は耐えられず、お腹を抑え、うずくまってしまう。


「あんた達……おかしいよ……。」


音亜の方が充分とち狂ってるのにそれに気付きもしないなんて……。

なんて愚かなんだろう。

音亜に憐れみさえ覚えてしまう。


「音亜。あんたがこれに耐えられるならあんたとの付き合い方も見直さなくはない。」


音亜が瑠花に近付き、殴られる。

そして後ろによろめく。

瑠花ちゃんから殴られることを幸せと捉えられないんて……可哀想な人……。

なぜこの幸せを理解できないのか分からない。


「やっぱり、あんたは私を心配してたんじゃなくて、自分のために私を捕まえておきたかったんだね。」


音亜は自分のことしか考えてなかったのか。

だから逃げたのか。

なーんだ。

瑠花ちゃんが好きなんじゃなかったのか。

なんだかがっかりしてしまった。


「あ、あ、ちが、そんなはず……。」


図星を突かれたのか走り去ってしまった。


「梨友大丈夫?」


瑠花ちゃんが私の心配をしてくれる。

私の心配なんてしなくていいのに。

幸せだ。


「大丈夫……だよ……。えへへ……。」


愛しい瑠花ちゃん……。


「これはご褒美。」


そう言って私の頭を優しく持ち上げ、キスされる。

為されるがままに舌をいれられ、ヨダレを送り込まれ、唇を痛くない程度に甘噛みされる。

そして勿体ぶるようにゆっくりと私の唇から遠ざかる。

気付くと自分の恥部が濡れていたが、幸いにも服までは到達していなかった。


「大好きだよ。」


あぁ、あぁ、瑠花ちゃん。

私のことを大好きだなんて……。

私はあなたの物なのに……。

愛情なんて感じる必要ないのに……。


「私も。」


色々言い返したくはなるが、そう返すので精一杯だった。

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