にーちゃん、にーちゃん

「にーちゃん、にーちゃん。立派なトサカじゃのう」

「おお!ばーちゃん、わかるかい!?」

「ああよ。50年商売やっとるが、にーちゃんほど高く盛り上げたトサカは初めてじゃわ」

「ばーちゃん。これはリーゼント、って言うんだぜ」

「英二。よかったな。ばーちゃんに褒めて貰えて」

「ミコ・・・それよりどうしてカナも居るんだ」

「決まってるよぉ。ミコちゃんが英二クンにやらしいことされないためだよぉ」

「でも、デートだぞ?」

「英二クゥン」


 うわ。出た。カナの本性。


「ウチの大切なミコちゃんとの関係性で二度と『デート』などという言葉を使うなよ!?」

「は、はいぃ!」

「この、クズがぁ」

「ひいぃ・・・」


 カナが英二のリーゼントを片手で引っ張り上げる時はまだ努気が半分ほどかな。両手で地べたを引き摺る段階でようやく8割だもんな。


「ほほほ。いいのぉ、学生さんは仲が良くて」

「・・・ばーちゃん。なんで今朝はあんなことになってたの?」

「ミコちゃんだっけか。夜中に便所に行った帰りに転んでしもうてのぉ。這うようにしてようやくあそこまで行ったんじゃよ」

「ええ?なら病院に行かないと」

「カネがないしもう大体歩けるように戻ったわいね」


 4人でやっぱり冷たいコタツに入って昆布茶を貰った。


「ばーちゃん、とにかくウチの高校の生徒にタバコ売るのはマズイよ。アタシらが手伝ってあげるから商売のやり方変えないと」

「あれ。そういえばにーちゃんの顔」

「んどきぃっ!」

「私にーちゃんの顔見たことあるぞいね」

「英二ぃ!」

「はい!カナちゃん!」

「カナ?」

「カ、カナ様!」

「テメーまだタバコ吸ってんじゃねーだろうな」

「や、やめましたっ!カナ様とミコの愛情あればこそのご指導できっぱりとやめました!」

「愛情なわけあるかぁ!無感情の単なる行政指導だ!」

「まあまあカナ」


 アタシは猛犬のようにいきりたつカナを鎮めつつ、ばーちゃんに提案したのさ。


「番犬に英二を寄越すからさ。高校生が来たらまあ毅然と断ってよね」

「あらぁ。でも私アルバイト代払えんぞいね」

「アタシが代わりに払うから大丈夫」

「ミコ!ホントか!?」

「そこの自販機のジュース一本ね」

「はあ?」

「こらあ!英二ぃ!ミコちゃんから駄賃が貰えるだけでありがたいと思ええ!」

「は、はい!カナ様ぁ!」

「ほほほ。いいのう、学生さんは優しくて」


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