凸凹珍道中始まるめう(???)
第4話 曲者ナイト
「ロンディーヌの商人か、残念だが帰って貰おうか」
「いえ違います、俺はただこの森で遭難してしまいまして・・・・・・」
全く信用されていない。まあナリからしてあからさまな不審者ですし。
「・・・・・・生憎だがこの国に入国するにゃちょいと手続きが必要なんだ。国籍はどこだ?」
「・・・・・・あ、え、日本です」
おい俺。
慌てたからって前の国籍言うか普通。案の定そんな国聞いたこともないぞって顔で見られてるじゃねえか俺のバカ。
「この人記憶喪失なんです。なんか森の木で頭打ったみたいで・・・・・・私はチハヤ、ロンディーヌからの難民。逃げてくる時にこの人を拾ってきた」
「・・・・・・そうか、それは大変だったな。わかった、一度騎士隊長の方へ連絡させてもらおう」
チハヤの助け船でどうにか受け入れて貰えることとなったようだ。
どうも俺はこういうとき情けなくなりがちなのでありがたいことこの上なし。
「隊長へ打電せよ」
電源コードも電話線もない黒電話みたいなものを持って上司の方へ連絡をしている騎士さん。
そういえば科学と魔法の混在した世界だって言われてたな・・・・・・
「・・・・・・隊長、二人難民の入国です。男女一人ずつです、はい。ロンディーヌの方ですのでお手数ではありますが
一度審査をお願いします・・・・・・はい、申し訳ございません。御意です!」
通話を切って、定位置に戻った騎士の方。
やはり規律には厳しいところなようで、整然としたイメージを強く感じる。
国境付近には魔物が寄り付かないらしく平和な雰囲気だ。
「すまんな、遅れた」
「はっ、お手数おかけして申し訳ありません隊長!」
少しして現れたのはほんのり色黒で彫りの深い重装備の男。
目力がとても強く、なんだか射抜かれるような視線がこちらに向けられた。
これほどまでの威圧は18年ほど野球やってきてもそういないレベル・・・・・・トップクラスのメジャーリーガー並だ。
「・・・・・・そこの女の子は大丈夫だ。問題はこっちの男」
「え、え何ですか俺何も悪いことしてないですって」
なんか目をつけられてしまった。怖い怖いその場で処刑とかあるんですか、首はねられるんですか。
何かを見極めたらしい騎士隊長さんの迫力に気圧され、俺はつい膝を折りかけてしまう。
「この類はシアンの野郎が管轄する問題だ、あいつのところに連れて行く」
「・・・・・・オータムベルク公爵ですか」
「ああ、あいつただのリッター野郎だったってのに昇進しすぎだわほんと。連絡取りにくいったらありゃしない・・・・・・ほら、行くぞ」
あっという間に手錠と首輪がつけられ、俺は囚人然とした様相に変化。警戒されるのはわかるがここまでしますかね普通。
「女の子も一緒に来い、いろいろネチネチ聞いてくるあいつのことだ。あとで事情を聞く可能性がある」
「・・・・・・わかった」
「よし、幸いにもここいらに出張してるらしいから今日中にはつく」
砦の門が思い音を囂々と鳴らしながら開く。
乱雑に放り出されたこちら側とは全然違う舗装された道。アスファルトに近い何かが敷かれているようで黒い地面が日の光を吸収していた。
有無をいわさず俺を引っ張っていく騎士隊長さん。その横をチハヤが楽しそうに軽い足取りで歩いていく。
「カツノリ、尻大丈夫?」
「痛いです、そんで地面熱いです」
「しゃーねーな」
ああまた担いでくれるのかなと俺は思いました。でも現実はそう甘くない。
まるで釣った魚かのように荒々しく引き揚げられ、首が絞まる。ああなんか向こうに鳳のアホ面が見えるぞ・・・・・・ああ殴りたい・・・・・・
「隊長さん、公爵さんのとこにつく前にカツノリがしぬ」
「なんだ貧弱な」
「ふづうにあるがぜでぐだざい」
なんだか散々な扱いを受けているのだが大丈夫なのだろうか。一応この世界と俺のいた世界の常識とか平均が違うってことは懸念してたけどいろいろおかしくないですかね。
結果普通に歩かせてくれるようにはなったけど俺の鉄壁と自負していたメンタルが磨耗しまくっている。
強かすぎる世界だここは。
「森さえ抜けりゃティーラハーフェンにつくからよ、そこにあるカラトゥリアンちゅう要塞にあいつは来てるのさ」
さわさわと、爽やかな初夏の風が俺の髪を乱れさせる。
なんだかリオンに来てから物騒な雰囲気はなくなり、平和な感じが漂っていた。
「ロンディーヌと違ってこっちは聖櫃の加護があるから魔物は少ないけど、やっぱりいるにはいるんだよな。ほらあそこにゴブリンがいるぞ」
「ほんとだ、私が倒していい?」
「いや君みたいな子にそんなことは頼めない・・・・・・て」
騎士隊長さんが言い切る前にチハヤが飛んでいって30mほど前に歩いていた人型のバケモンを一蹴。
首から上が吹き飛んで、そのまま胴体が地面に落ちた。
「リオンのやつ、すっごいよわいね」
返り血にまみれて軽くチハヤはにっこり。
もうこの子なら一人でもこの先生きていける気がする。
「・・・・・・まあこの国はさっきも言ったとおり聖櫃の加護があるからな」
「すごいんだねー」
なんか騎士としての強さを見せておきたかったっぽい隊長さんの顔が悔しそう。まあ年若い女の子にやられちゃあ面目も潰れちゃうもんだ。
「それにしても強いな君は」
「ロンディーヌではいっぱい兵士として働かされちゃったからね。逆らったら殺されちゃうんだもん、頑張るしかなかったの」
しれっととてもきついことをおっしゃったのだがチハヤは、いやチハヤさんは飄々としている。
騎士隊長もなんか絶句してるし。
「やはり全国民平等主義とは聞いていたが実際は恐ろしいな・・・・・・」
「・・・・・・そうですね」
なんだか前の世界にあった、崩壊した某国を思い出す。
平等とはいっても一部の人間による一党独裁状態なんて感じだったし、たぶんあの国へ行ってもいいことはなかっただろう。
「あ、またゴブリンきてるよ」
「では、今度こそ見せ場といこう。こいつを頼む」
騎士隊長が剣の柄を握った。
静かに呟く言葉・・・・・・瞬間、厖と体表から溢れる雰囲気が空気と入り混じる。
「・・・・・・消し飛ばせ、ルーンベルング!」
振りかざす白銀の剣。繆と光が絡みつき、刀身をさらに長くしていく。
「はァぁあああああああああああ!!!」
降ろされた光の帯が、周囲の木もろともゴブリンを消す。
跡形もなくなった森。明らかにオーバーキルだ。
力を見せたかったのかもしれないがいかんせん張り切りすぎではないだろうか?
「やりすぎじゃん。環境破壊じゃん」
「・・・・・・てへぺろ」
「気持ち悪い」
チハヤさんのドストレート発言に騎士隊長さんはう、と気まずそうな呻き声を上げた。
なぜ異世界にも来ててへぺろを聞く羽目になるのか俺にもわからん。
「まあ、騎士さんがすごいってのはわかりましたから」
「・・・・・・そうか。それならいいんだ・・・・・・まあ俺の実力もシアンにゃかなわんがな」
剣を鞘に戻し、苦笑する騎士隊長。
「自己紹介をしていなかったな。俺はリオン聖国自衛軍第3小隊隊長カルロ・ヒルベルト。まあ以後お見知りおきをだ」
「・・・・・・宮下克典です。よろしくお願いします」
「チハヤだよー」
なんかこの調子で大丈夫かと思うが、また新しい死亡フラグがたたないことを祈るしかない。
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