第14話「投票結果」
犬である私には、人間社会の習わしや高度な思考など理解できないことも多い。
ただ、私には同僚の仲間たちが居る。
私は彼らの思いを汲んで藤堂に投票したに過ぎない。とても、持て囃されるような理由からではなかった。
それなのに、先輩も沙織ちゃんも——はたまた部長も、私のことをまるで英雄のように讃えてきた。確かに、私の投じた一票によって、流れが変わったような気もする。
これからも私はこの会社で、仲間たちと仕事を一緒にしていくのだ。そこに、犬も人間もない。
私はただ会社を──家族の生活を支えるために、働き続けなければならないのだから。そこに縄張り争いや小競り合いなどいらない。
一致団結して群れを大きくして、支えていかなければならないのだ。
「本当に凄いな。お前……」
先輩が私に握手を求めてきた。
手を差し出されたので、私も前脚を乗せてお手を返す。
私には、先輩たちの称賛の言葉が理解できなかった。
──何故なら私は、ただの犬に過ぎないのだから。
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