第4話「仕事が終われば家に帰る」
帰省本能という奴であろう。
仕事を終えた私は、コンクリートジャングルの中を真っ直ぐに自宅へと帰った。
前脚でトコトコと玄関の扉を叩くと、妻の
「お帰りなさい」
家の中に入ると、愛は私の背広や外靴を脱がしてくれた。
私と愛は大学来からの付き合いである。たまたまゼミが同じになって打ち解け、デートを重ねていく内に親密になった。籍を入れ、今では子どもも一人居る。
勿論、愛は私とは違って普通の人間の女性だ。
「今日もお疲れでしょう? ご飯の用意、出来ているわよ」
愛が好意的な笑みを浮かべてきた。
奥から味噌の良い香りがしてきたので、食事の準備が出来ているということが伺えた。
愛は私を抱き上げ、居間へと連れて行ってくれた。
娘の
私たちの気配に気付いて空が「お帰り〜」と振り向く。そして、私たちの顔を見るなり、ゲェッと舌を出した。
「
娘からしたら、私が抱っこされている姿を見るのも嫌なのだろう。
「もう、何よ!」
愛が恥ずかしそうに頬を赤らめる。
私も、空に対して──別にそういうつもりじゃない、と抗議の声を上げたものだ。
「ふ〜ん……。そうなんだぁ……」
娘が目を細め、疑いの眼差しを向けてくる。
そんな風に見られたところで、返す言葉もない。
ところで、不思議なことに、血の繋がりがあるからであろうか──私と空はお互いに意思疎通ができていた。
私には、愛の言葉は理解出来ない。
──ただ、愛と同じ言語を使う、空の言葉だけは自然と理解出来ていた。
まぁ、空には、そのことに自覚はないようだ。私と愛が、普通にコミュニケーションが取れているものと思っているらしい。
愛は話を逸らすかのように、私たちに言った。
「ほら、ご飯出来てるわよ。お父さんも食べるから、ゲームばっかりやってないで、あなたも食べなさい!」
「はいはい」
空は面倒臭そうにぶっきらぼうに返事をすると、データをセーブし始めた。
私が椅子に座ると、後からゲームの電源を切り終えた空もやって来て、テーブルを挟んだ向かい側の席に座った。
愛は箸を持つと、器用に茶碗のご飯を
私はそんな動作がまどろっこしく思えて、皿に置かれたステーキ肉にかぶりついた。
ふと、顔を上げると、空からジーッと冷ややかな視線を向けられていた。
「父さん、お行儀悪いのな……」
愛の言葉は理解できたが、言っている内容までは良く分からなかった。
──お行儀?
それは、生きていくために必要なことなのか?
「こら、空! いくらお父さんが優しくて何も言い返さないからって、失礼なことを言うんじゃありません!」
「はいはい」
愛に
──何とも幸せなひと時であろう。
人間だとか犬だとか、そんな種族の違いや
私にとって家族と過ごすこの
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