よん
ガソリンと鉄が焦げる匂いが辺りに広がる一条たちが乗っていた車は横転し、地面にぶつかった部分は半分に折り畳まれていた。
その大地に天使の羽を生やした化物は降り立った。
無い首を回して辺りを注意深く観察する。そしてガチャリと地面に何かが落ちる音を聞くと素早く飛び立ち、物音へと跳びかかったなだ。
「グハッ……」
重いその銃を手放さずに握り、頭から血を流していながらも倒れずにいた二宮の腹を強く踏みつけると、念入りにとばかりにさらに強く押し込んだ。肋骨が音を立て、口からさらに血が溢れ出してくる。
だがそれでもこの至近距離。千載一遇のチャンスを逃すかと、銃口を腹にあて引き金を強く引こうとした。
――その瞬間、何もない首から灰色の触手を突如として伸ばし、目の前に向けられた銃と二宮の首と腕に絡みついた。
触手は腕を軋ませ、無理やりに銃を手放させると奪い取ったその銃を幾本にも絡ませ高くに、もう二宮の手には届かないように自分の背後へと隠してしまう。
もうなにもこの体を傷つける物はないと化物は確信すると、倒された仲間の分だと言いたいのか、ゆっくりと足に、触手に力をいれ始める。
その痛みに呻き声をあげ、血は腹からも口からも噴き出しているがそんな些末なことなど化物にとっては関係なかった。ついに限界を迎え、彼女の目からも生気が失われ始めてきていた――。
――空気を裂き、鋭い唸りをあげ破裂音をたてる。
突如として鳴った音に化物が振り返ると、そこには満身創痍の一条が震える血だらけの手でピストルを差し向けていた。このピストルからは硝煙が立ち上っていたが、化物の体にはホコリ一つついていなかった。そう化物には……
弾丸が突き刺さったのは二宮から奪っていた砲台の動力部分。弾丸の熱で溶けた表面は徐々に青白い光を高めていっていた。
それに化物が気づいたのは、光が膨張し、弾丸の栓が光を抑える限界に達したその時であった。
すぐに投げ捨てようと触手を振りほどいたが時すでに遅し。一度漏れだした光は誰にも止めることが出来ずに、この天使を跡形もなく吹き飛ばしたのであった。
一条は息絶えそうになりながらも、彼の後ろで気を失った五代が息をしているのを確認すると、二宮の方を見つめた。
「武器の弁償、何で払えばいいか?」
「……そうだな。今日のイタリアンは今度にする。だから次行く時は貴様が財布を持ってこい」
Killer:A 坂口航 @K1a3r13f3b4h3k7d2k3d2
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