椎名鉢と高野初花。


 二年生と一年生で、学年も違い、また性格も違う二人がこうして先輩後輩の仲になったのは、一緒の部活動に参加していることが原因だった。

 その部活動は、ちょっと変わった部活動で、部活は園芸部で、いわゆる普通の部活だったのだけど、鉢と初花の所属しているこの七草高校の園芸部は、普通の植物を育てない園芸部だった。

 では、普通の植物を育てないで、なにを育てるのかというと、七草高校園芸部はとても珍しい、昔に滅びてしまったと思われていた、一つの古い種を発芽させることを、目的にしている珍しい園芸部だった。


 椎名鉢が園芸部の部室に行くと、そこにはもう高野初花の姿があった。

「あ、先輩。こっちです、こっち」

 スチールの四角いテーブルのところに座っている初花はそんなことを言って鉢のことを手招きした。

 鉢は初花の反対側にある、スチールの椅子に腰を下ろして、初花を見る。

(初花は鉢の視線に気がついて、にっこりと鉢に笑いかけた)


「先輩。これ、食べます?」

 初花は言う。

 初花の指差しているテーブルの上には薄い四角い白い箱が置いてある。その箱の蓋はもう開いていて、中にはいろんな可愛らしい形をしたチョコレートがたくさんはいっていた。(すでに初花が食べたのか、二つほど、その箱の中にあるチョコレートの数は減っていた)

「食べる」

 鉢はそう言って、一つ、チョコレートを手にとって、それを口の中に運んだ。鉢は園芸部らしくアーモンドの種が乗っている葉っぱの形をしたチョコレートを選んだ。(チョコレートは思っていた以上にとても甘かったけど、すごく美味しかった)

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