結婚指輪のその後。

結婚指輪の内側には、刻印がある。

入籍日の日付けと二人の下の名前のイニシャル。

それと、小さいダイヤが、私の方は表側に、夫の方は内側にはまっている。


指輪を作る時、全面的に私に任せると言われて一番困ったのが、夫のダイヤの色をどうするかだった。

迷うほどには選択肢があったから。


無色透明:永遠・純粋

ブルー:幸せを呼ぶサムシングブルー(女性向き?)

ピンク:幸運・愛

イエロー:希望・実り

ブラック:敬愛・万能


たかが色、されど色。

自分のはすぐに透明のに決めたけど、人に対して色を決めるって難しい。

ラッキーカラーや好きな色があるかもしれないし、何でもいいと言われてしまったら、決め手がなくてよけいに困る。


客観的に選ぶとしたら、その人との相性? 縁起?

でも、上記のような意味を言われたら、それはそれでまた迷ってしまう。


夫は指輪をすることに積極的ではなかったのだから、こんなこといちいち訊いたら面倒がられるかと遠慮していたのだけど、やっぱり自分だけでは決められず、思い切って相談した。

男性だし、黒と言うかなと想定して。

これは言わないでおいたけど、2月生まれのラッキーカラーも黒だった。


ところが、無色透明いいと言う。

理由は「シンプルに」だった。


結局、二人お揃いの「透明」になった。


ちなみに私の方は、何があっても「永遠」が一番と思ってそれを選んだのでした(こわい!?笑)


サイズは、夫が18号。

私は、既製品のおしゃれ用の指輪はいつも7号だったので、最初から当たり前に7号で話を進めていた。


注文用紙にすべての仕様を書き込んで、いざ発注せんと店員さんに渡して確認してもらい、立ち去ろうとした時、「お客様!」と呼び止められた。


「さっき気になったんですけど、7号だとちょっと回ったりしてませんでしたか?」


いつもの指輪はデザインがついていたりするので、多少回ってもオモテが完全に手のひら側に来ちゃうことはそんなになく、ほとんど気にしてなかった。


店員さん曰く、「ずっとし続けるものなので、回るというのを気にされる方がけっこう多いんです」。


そして、試しにと6号をはめさせられた。

たいていのアクセサリー店では6号はディスプレイされてないので、はめてみたこともなかったけれど、確かにぴったりだった。


というわけで、注文サイズは6号ということに——。


今でも、あの場面を鮮明に思い出す。

結婚して4、5キロ太った私の指に食い込む指輪に難儀する時には、必ず。


あの時、呼び止められたりしなければ。

サイズダウンに応じなければ、こんなことには。。。



一方、夫の方にも「事件」があった。


ある日、睦み合っている時に、夫が指輪をしてないことに気づいてしまった。


すると言ったからには、太ってできなくなるとかじゃない限り、してくれると思っていた。

あるいは、こっちのお願いを聞いてはめてみたけど、やっぱりしたくないと気が変わったのだとしても、「ずいぶん早いな」とも思った。


さては、なくしたのかな??


少し時間が経ってから、「あれっ、もしかして指輪してない?」

と、いま気づいたふうにして訊いたら、バツが悪そうな態度をした。


なくしたのなら、買い直してもいいと私は思っていたのだけど、夫が言いにくそうに言った理由は——


この前、ふと指輪してる自分の手を見て、「なに、調子に乗ってんだ!」って腹が立ってきた。

いいトシでまだ独身の人の話を聞いてたら、「自分だって、つい最近までそっち側にいたくせに」って思って、自分も指輪する資格なんてない、見せびらかしてるみたいで(そんな自分を)許せなくなった。


私の想像を超えた理由だった。。。


そんなことないよ、となだめになだめて、指輪は夫の指に戻った。


それから何年かして、太ったという理由で外してたことがあったけど、その時は、私だってこんなにキツいのにしてるんだよと証明して見せて、「キツい指輪のつけ外し」のコツを伝授しようと夫の指で実演してみたら、思ったより簡単に入った。


なんだ、私より全然マシ。

「また、なんとか理由つけて、指輪しないようにするつもりかと思ったよ」と言うと、「実はそうだった」とアッサリ白状した(太ったのは本当らしかったけど)。


逆に、どうして私がこんなに指輪にこだわるのか自分でもわからないのだけど、してくれているとすごく安心することだけは確かなのだ。


そして、肥えて完全にハマらなくなる心配をすべきなのは、目下のところ自分の方なのだった。。。

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