ベッド。
それまで、夫と私が同じ高さで寝たのは、お正月に夫の両親に会いに行った時に泊まったホテルのベッドでと、夫の誕生日祝いと新居探しを兼ねて、一人暮らしの夫の家にお邪魔した時の布団で、の二回しかなかった。
私の部屋に泊まりに来た時は、私のベッドの下に布団を敷いたし、新居でも最初はそうなっていた。
私の部屋でも新居でも、一つの布団で寝ようという時には、私がベッドから落下して「ゴロゴロゴロ……」と言いながら夫のところまで転がり、体がぶつかると「コンニチハ」と言う。
最初、夫は大爆笑した。
それから、私をやさしく抱き締める。
いつしか、そこまでが儀式になった。
けれど、いつまでもそんなことをしてるわけにもいかないし、眠るまでの間にお互いが視界にいないのはさびしい。
このベッド処分して、布団生活にする?
——そう提案してみた。
一人暮らしを始める直前の実家では、自室が狭かったのでベッドを置けず、私も布団生活だった。別にイヤではない。
すると意外なことに、「いや、ベッドの生活をしてみたい」と夫は答えた。
それで、私と同じ高さのベッドを、家具店や通販で探し回った。
けれど、見つからない。
私のベッドは下に荷物を収納できるように、通常より床面が高い造りになっていたので。
「じゃあ、自分で作るかな」と言う夫。
それもおもしろそうだねと、二人でホームセンターに材料を物色しに。
太い角材を脚にして、板を渡す。
という感じの、そんなに複雑じゃないイメージだったけど、90キロくらいの体重を支え、なおかつある程度の耐久性のあるものが必要になる。
店員に相談すると、店頭にある材料では対応できないらしかった。何より、脚が難しいとのこと。
それでも諦めない夫。考えた末に、直方体の箱を5つ作って四隅と中央に置いて脚にすることにした。
厚さ1センチくらいの幅の細い板を30センチ長さに切ってもらって、それを縦横互い違いにログハウスのように組み上げる。板の間に隙間が空いててもいいので、木材はかみ合わせずにL字金具で留める。
そうして完成した脚(箱)の上に、買ってきたすのこベッドを置く。
その上に布団を敷くと私のベッドとぴったり同じ高さになった。
私は感嘆して、褒めちぎった。
おやすみと言って眠る時、すぐ横に夫の顔がある。
こんなことが、すごく幸せに感じられた。
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