結婚指輪。

「男の人って、そういうところ気が回らないから」

って、女友だちが言った。


結婚指輪は?


って訊かれて、私が「まだそういう話はしてない」って言葉を濁した時だった。


「たぶん夫は、結婚指輪とかしたくない人だと思う」と付け足すと、


「オトコはそれでいいかもしれないけど、たまきがほしいなら、

ちゃんと言った方がいいよ。

結婚って、からだからね」

と言われた。


それからブツブツと「普通は、オトコ側の女親が息子に言ってくれたりするんだけどね。ちゃんとしなさいよって」とつぶやいてた。


お義母さんも、そんなこと言わない人だろう、というか、

それまでの夫の話から、ご両親も指輪なんてしてない人たちかもしれないと、私は想像してた。

それに、こんなトシになって、親が息子の結婚にとやかく言ってこないだろうという気もした。


そこで私が考えたのは、入籍予定のクリスマスイブに会う時に、

私からのクリスマスプレゼントと入籍記念ということで、

安いペアリングでも買って渡そうか……ということだった。


本当は、指輪をつけてもらえたらうれしい。

いっしょにはめていられたら、こんな幸せなことはない。


私の想像通り、どうしてもしたくないと言われたら、

せめて、入籍の日だけはめてもらって、写真でも撮っておいて、

あとはつけてくれてもくれなくても、何も言うまいと決めた。



そして、12月になるころ。


夫の方から、指輪、挙式、新婚旅行みたいなことはどうしますか?

したいですか?


——みたいな感じのメールが来た。


指輪もだけど、挙式や旅行まで!?

イベント事が大キライって言ってたので、夫の意識の中にそれがあったのが驚きだったけど、訊いてくれたのはうれしかった。


YESと言ったら、やってくれるってこと?

期待してなかっただけに、喜び100倍って感じだ。


「したくない人だと思っていたので黙っていたけど、

もしやってくれると言うならやりたい」と、私は答えた。


やっぱり、夫は本当はやりたくないようだった(笑)。


指輪は、ほしいならいいよ、買おう、ってなって、

旅行は、マイルが溜まっているから飛行機代くらいは出せる、ってなって、


……でも、挙式は勘弁してほしい、と来た。

どうしてもやりたいとなったら、

ごく親しい人のみのちょっとしたお祝いの会くらいなら、と。


その最後に、「やっぱりたまきさんも、ドレスを着たいみたいな希望はありますか?」って書いてあった。


ドレスは着てみたい。

私は、大学の入学式用の紺のスーツしか着るものがなくて(リアル貧乏で)、周りから完全に浮いていた成人式の時から、いつかビカビカに着飾ってやるんだって誓ったのだ。

それは結婚式の時だ、と。


さらにお祝いの会開催がOKなら、もう私としては万々歳だった。

どっちも期待してなかったのだから。


なので、二人で衣装を着て写真を撮って、その時でもあとでもいいから、親族の顔合わせということで食事でもしようって提案した。

なるべくお金はかけないということで。(私は指輪と引っ越しで手一杯だったから)



結果、指輪は私が手配して、お金は夫と私で7:3くらいの割合で出資(?)し、挙式やお祝いの会は同居して落ち着いてから考えようということに。

旅行は、私が稼いで、また少し貯金ができたら改めて提案しようと思った。


夫が近くの宝飾店で自分の指のサイズを測ってもらって、私に伝えてくれた。

それを持って、友だちに付き合ってもらって地元の店へ指輪を選びに行くと、

なんと入籍の日にギリギリ間に合うかどうかということでかなり急かされた。


もう、その日のうちに決めて、当日受け取るということで何とか発注できた。


指輪のその後は——。

最初は、入籍から同居まで離れ離れだから、結婚の印ということで、

と指輪をしてくれていた。

その後も、どうせここまではめていたなら、ずっとしてくれたらうれしいな、

と私が言ったら、結局(いろいろあったけど)ずっとはめてはくれてる。


ちなみに、実家に帰省した時には、「え、指輪してるの!?」とお義母さんに驚かれてた(笑)

やっぱりね、と思った。

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