「閨房」をググった。

お正月に夫の帰省について行って両親にごあいさつ。

この段取りを決めたあと、夫は飛行機とホテルの手配をして、それをこちらに伝えてくれた。


そのメールにこうあった。


「正月には一応、すでに籍が入っているという想定で、ホテルの部屋は勝手にツインにしてしまったけれど、よかったですか?」


私はビックリして、

「ホテルの部屋が別々だったら、逆に泣いちゃいます」

と返した。


それから、「出張でたまに人と同室になることがあって、自分がけっこうないびきをかいてるらしいことがわかった。試しに自分で録音してみたら、ほぼ一晩中かなりひどいいびきだったので、先にお詫びしておく」ということが書いてあった。


そのあと。

閨房けいぼうの話が出たので、ついでに訊きますが、これからでも子供はほしいですか?」

という質問が来た。


閨房???


わからなかったのでググってみたら、「(夫婦の)寝室」という意味らしかった。

たぶん、テレなんだろうなと可笑しかった。

本当に、うちの夫はおもしろい。


でも、内容は真面目なこと。


二人ともいい歳だし、すんなり子供を持てるとお互いに思ってないということはなんとなくわかっていたけど、子供を持てる持てないという結果とは別に、「作ろうとするか、しないか」という問題はある。


ウヤムヤのまま行くんだろうなと漠然と思っていたけど、ハッキリ訊かれたら、私の答えは「努力するのはやぶさかじゃない」ってなる。

でもそれは、不妊治療が前提になることは間違いなかった。

なので、どの先生に頼むかも含めて、もっと若いころからきっちりと考えていた。


子供への思いとか、不妊治療の具体的なことについて、何度も何度もメールを書き直した。


男性不妊の問題もある。まず、二人とも調べられる。

そういうことを夫が受け入れられるかということもある。


やるとなっても、簡単に成就しないことの方が多いので、お金と体力と情熱がいつまでもつか。


なんとか生めたとして、その先、こういう年齢で育てて行けるか。体力的にも経済的にも覚悟がいる。


悩んで悩んで送ったメールだったけど、夫の返事は意外にあっさりしていた。

私への気遣いもあるのかもしれないけど。


「そもそも、結婚自体ができると思ってなくて、そういう意味では子供も諦めていたようなところはある。

だから、お互いにどうしても、というならがんばってもいいけど、自然に任せる程度でいいのでは?」


それが夫の答えだった。


落ち着くところに落ち着いたって、私はホッとした。


「自分が子供のころからほしかった ”自分の子供”」。

たぶん、私は持てないんだと思ったけれど、こんな話をしながらも、結婚するとなってから夫が私にくれた幸せは、それを補って余りあるように感じられた。


もし神様が子供を授けてくれるというのなら、自然にしててもできるんだろう。

それでいいんじゃない、って心から思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る