ふつうじゃない!?
そのほかに、結婚に向かって私たちが交わしたメールの内容は、ざっとこんな感じ——
ほぼ全部、夫の方から持ち出してきた項目だ。
まず、「どこに住むか、それによってお互いの仕事をどうするか?」。
私は、夫の住むところに行くつもりだった。なぜなら、夫の仕事の方が替えがきかないし、夫の方が収入もずっとずっと多いし。
夫はさらに、私が当時住んでた所で仕事を続けたいのであれば、通い婚でもいいなんて言う。
やっと、ずっといっしょにいられるようになるのに、通い婚!?
そんな選択肢、まったく考えてなかった。
私は、「仕事はしたいと思ってるので、そっちに行ってから新しい仕事を見つけたいと思う。同居で、私がそっちで仕事をするのはかまわないですか?」と書いた。
すると、私が仕事をするのは助かるという答えだった。
理由は、自分は長生きできる気がしないし、これまでずっと一人で将来を考えずに好きなように生きて、好きなように散財してきたので、残せる財産もないから、ってことだった。
結婚にあたっての話し合いって、ふつうはもっとラブラブほんわか幸せな感じなのかと思ってたけど、何から何まで「ふつうじゃない感」満載で、ずいぶんシビアだなと、私は苦笑した。
夫らしいと言えばそれまでなんだけど。。。
この時点では、私はまだ会社には結婚を言ってなかったのだけど、その後、年明けの1月末付けで円満退社ということに。
もちろん、すぐにも夫の元へ、と思っていた。
すると、今度は、実は異動の希望を出していて、結果が2月か3月にならないとわからない。もしOKになったら、全然違う県に行くことになるので、決まるまで引っ越して来ない方がいいだろうって言ってきた。
というわけで、同居開始は3月。私の方で引っ越し業者の予約が取れた日が決行日ということになった。
その年、夫は大変な仕事を、本人曰くは「押し付けられて」、あまりに忙しくてもうイヤだ、抜け出したいと思っての異動希望だったらしいのだけど、結局、その仕事の完結までに2年はかかるとのことで、途中で抜けさせてもらうことはできなかった。
だから、最低でも結婚後2年はその時の居住地に住むんだなぁと、逆に言えば、2年で引っ越すんだなぁと、私は思っていた。
ところが、いろいろあって、いまだにそこに住んでいる。
次に夫が言って来たのは、「名字をどうする?」ってことだった。
自分は、オトコが妻の名字になることにまったく抵抗がない。もし、私の実家が名字を継いでほしいと思っているとか、そういう事情があれば喜んでそっちの名字になるし、特に事情やこだわりがないってことなら、ジャンケンで決めてもいいよ、と。
私はふつうに、夫の名字になるつもりだった。もっと言うと、自分の名字は子供のころからキライだったので、やっと変えられる! と喜んでいたのだ。
夫の名字は、けっこう好きだったし。
そう言ったら、夫はちょっとつまらなそうだった。
それから、自分の親に結婚のことを話した、という報告が来た。
私は、夫の両親にどう言われるか気にはなっていた。
すでに私たちはいいトシになってるうえに、私の方が年上だったから。
それに対して夫は、両親はしきたりとか形式張ったことに興味がないから、
そういうことは気にしなくていいって言っていて、報告の結果、「案の定、たまきさんがどういう人かまったく訊いてこなかった」「ひたすら、よかったと喜んでいた」「たまきさんに会うのを楽しみにしてると言っている」とのこと。
ホッとした。
お正月の帰省に、私を実家へ連れて行くつもりだと言われて、だったら、そのごあいさつのあとに入籍かな、と漠然と思った。
ところが、今度は「いつ入籍するか」という相談が来て、自分はいつでもいい、切れのいいところで年内ギリギリの大晦日とか、年明け1月の私の誕生日とか、次月の自分の誕生日とか、引っ越して来て同居スタートの日とか、私が好きに決めていい、と。
「両親へのあいさつの時」みたいな選択肢は書いてなかったので、「早くても、お正月のごあいさつを済ませてからですよね?」って訊いたら、そんなの気にしなくていいとまた言った。
だったら、私の答えは一つ。
一つでも年齢が若いうちに、つまり、年明けすぐに歳を取ってしまう前がいい。
ということで、年内にできるなら、忘れづらい日付けで、できればロマンチックなのがいいと思って、「クリスマスイブ」を提案した。
クリスマス当日はうちの母の誕生日なので、そこはずらして。
そうと決まったら、今度はうちの家族にいつ会わせるかって話になって、入籍の日に夫にこっちに来てもらって、うちの家族と会食して、そのついでにこっちの役所に婚姻届を出そうということに。
夫の家族よりこっちの家族に先に会うこともちょっと悪いかなと思ったけれど、夫の答えは「まったく気にしなくていい」だった。
次は、婚姻届の話。
私が役所でもらってきた。見ると、保証人がいるらしいことがわかったので夫に連絡すると、親になってもらうとのこと。
そして、自分たちの本籍地を定めなくてはならないわけだけど、夫は自分の今の住所には縁もゆかりもないので、私がその時住んでた住所でいいよとか言う。
それも、なんか違う。
と思った私は、考えた末に、初めて夫の住む街(いま住んでるところ)でデートした日に、最初に行ったスポットを提案した。
そこには縁結びの願掛けができるコーナーがあって、こっそりと願掛けをして、そのおかげで叶ったとも言えるので。
こうして、ふつうじゃないような話し合いをたくさんして、
ついに、あの問題へと話が及ぶ。
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