おそろいのネックレス。

第四の男は、大学の同級生で、当時から友だちとしてはそこそこ仲が良かった。

異性としては、お互いに好みのタイプに当たらないことはわかっていて、純粋に気が合う同士という感じ。もっとも、そんな彼のことを来るものは拒まない人なのだと思っていた。


卒業後もたまに連絡を取っていたので、ふと気が向いて久しぶりのご機嫌伺いをして、積もる話をするのに飲みに行った。彼は拒まない人なので。


そこで、お互いフリーだし、月一でドライブでもして遊ぼうかという話になったのだった。


ある時、観光地のお土産物屋が並ぶ通りを歩いていると、「幸運を呼ぶアクセサリー」というようなものを売っている店があって、呼び込み上手の店員にのせられてちょっと寄ってみた。

店頭には、これを身につけて宝くじや競馬を当てたという有名人のポップが並び、店員自身も見事にカレシを見つけて結婚出産できたと、子供の写真を見せてくる。


この店員の「結婚」エピソードに密かに食いついた私。

目ざとい店員に、好きな色を訊かれて、色とりどりの石を見せられる。さらに、運気アップさせたいのが結婚運だったら、この色がいいと、ダブルで買うことを勧められて、あまりに高額になるので断った。


店員がなかなか引かないので、「じゃあ、福地くんが半分出してくれるなら、いいよ」と冗談で言った。


私の頭の中のシミュレーションでは、そのあと

「なんでやねん!」

「私に投資してくれたら、倍にして返すから」

「アホな」

「だよねー」

となって、ムリです、買えません! と退散できる予定だった。


なのに、福地くんが「アホな」じゃなくて、「いいよ」と言ったので、私はビックリした。

しかも、自分の分も買うと言って、さっさとクレジットで決済してしまった。


私は目がテンになった。

慌てて、今日は手持ちがないけど次回お金を払うと言ったら、前言どおり半額でいいと言う。

そして、まるで恋人同士のように二人で色違いのネックレスを首から下げて帰ってきたのだった。


なんでそんな太っ腹なことしたのかとあとから訊いたら、「だって、本当にそういう効果があるのか、見てみたいじゃん」と言っていた。


この話を二人の友だちにすると、二人とも、彼は私に気があるんじゃないかと言った。


そこからやっと、気があるにしてもないにしても、私も彼をオトコとして意識してみることにした。

もし、このまま夫や保険の第二の男とうまく行かないという結果になったら、彼に「私と結婚してくれない?」って言ってみるのもありかもしれない。

彼といると、女友だちといる時と同じかそれ以上に飾らずに楽しく過ごせるのだから、少なくとも第二の男と同等以上の相手だと思えた。


本命の夫、保険の男、旧知の友だちである彼。

三人の名前を胸に刻んで、夏が過ぎて行った。

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