四つ巴。

もちろん夫には内緒で、私はその第二の男とデートした。


こんな歳になって、つき合おうって言われて、はっきりとは言葉には出さなくても、「結婚を前提に」という意思が感じられた。


このわかりやすさは、ラクだった。

ストレートにぶつかってこられて、ストレートに返していける。

わけがわからずに、悶々と一人で悩む必要がない。


車の中でいろんな話をした。

彼は以前からそうだったけれど、話は楽しい。コミュニケーション能力も高く、自分も話すし、相手にも話させて、ちゃんとリアクションを返してくれる。


仕事もがんばっているようだし、人としてはまったく問題なかった。


あとは、オトコとしてどうかだけ。


好きになれるかどうか。



結局、私たちは2回、ドライブデートした。

混浴温泉に行ったり、紅葉を見に行ったり。


彼はバイクが好きで、基本的にはアウトドアな人だった。

ほとんど紹介に近いような形ばかりの合コンで会って、本当はその時につき合うはずだったのに、「週末はいつも仲間とバイクで出かけてるから、土砂降りでそれが中止になったらデートしよう」と言われたきり、自然消滅した。その年の夏は、週末に土砂降りになることがなかったから。


それくらい、バイクに乗ること、仲間とつるむことが彼には大事だった。

(本当は、合コンの関係者の方とつき合ったりしてたこともあとで聞いた。そのへんの詳しい話は拙作『オトコの海を泳ぎきれ〜実録・婚活ノート〜』に譲る)


私たちのドライブデートも、最初はタンデムツーリングをしたいと言われたのだけど、私の体調が悪くて車にしてもらった。


バイクが車になっても、彼はアウトドアっぽいことをしたがる。それが、これからの私たちの流儀になるのだと言わんばかりに。


車を止めてアウトドアのグッズを取り出して、普通の観光地でドリップコーヒーを淹れてくれた時は、正直、ちょっと引いた。

そこでは、誰もそんなことをしてない。でも、彼は満足そうだった。


私はブラックコーヒーが飲めないので、すごく申し訳なかったけれど、彼が公衆トイレに行ってる間に捨ててしまった。


時は、秋。

もっと寒くなれば、アウトドアもオフシーズンになる。

それまでの辛抱だと思った。


だけど、彼のことを好きになれば、慣れないアウトドアももっと好きになれるのかな?


そんな感じでもあった。



一方、夫の方は相変わらず。

9月の終わりの夫の演奏会に行くことになって、その翌日にランチくらいなら時間が取れると言われていたけど、確約ではない。


普通にメールをしても、返事が来なかったりする。


SNSを見て、書いてある内容に関することをメールしてもまったく無視。

推進力を出すのが大変だった。


だからなおさら、第二の男を好きになれたらラクなのにと思ったんだろう。



そして実は、第三、第四の男もいた。


第三の男は、婚活サイトで夫とまったく同じ時期に自分から選んだ人。


見た目は自分の好みに近く、あちらも「このままつき合って、うまく行くようなら一緒になろう」って言ってくれたのだけど、数回会って、あまりにしゃべらないことと、それならとこちらがしゃべっても反応をあまり返してこないことに耐えられなくなった。

最後となったデートの時、こちらがしゃべらなかったらどうなるかと思って、実験的に何もしゃべらずにいたら、あちらも全然しゃべってこなかった。


次のデートの日にちも決まっていたけれど、結局その前になっても連絡が来なくて、私も連絡をしなかったので、そのまま立ち消えとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る