第二の。

今後、夫との宙ぶらりんの関係をどうするかを決めるために、一か八か出してみようと思っていたメール。

夫の名前がついてるメールの振り分けフォルダ──例の、未読が25と表示されているフォルダ──には、まだ7つの下書きがそのまま残っている。


私が、今後夫とのことをどうするか方針を決めるために書いたメールの内容は主に二つ。


もっとお互いのことを知ったり、この関係をどうしていくのかを話したりするために、時間を気にせずに会う時間がほしい。

だから、(泊まる部屋は別々でいいから)のんびり気軽に温泉にでも行きませんか? ということ。

もう一つは、クリスマスは会いたい(そこまでつき合いを引き延ばせればうれしいというのもあった?)ので、まだ予定が入ってなければお食事でも、ということ。


この二つの柱にかこつけて、私が夫をどう思っているかとか、(婚活サイトでの出会いだから大前提として)結婚についてどう思っているかとか、今このつきあいの状況をどう感じているのかとか、そういうことを足したり引いたり、違う言い方にしてみたり。

そして、夫の方はどう思っているのかが気になっていること。


そういうことを、何度も何度も書き直していたのだった。


でも、やっぱり、その段階で夫にそこまで問うのは、彼にとっては時期尚早かもしれない、その結果、否定的な答えが出るように促してしまうかもしれないと恐れて、送信できなかった。


たぶん、送らなくてよかったのだろうと、今は思う。


そんなことをして悶々としているうちに、さらに1週間が経ち、驚くことが起こった。


3年くらい前に紹介されて会った男性から、突然メールが来たのだ。


その男性とは、最初はいい雰囲気だったのだけど、間に立った人がトンチンカンな動きをしたためにすれ違いが起きて、自然消滅という形になっていた。


話があるから、会いたいとのこと。

その「話」がなんなのか興味があったので、OKした。


会ってみると、彼は以前とは違って、神妙な態度でこう言った。

「3年前に自然消滅するに任せてしまったことが気になってたので、謝りたかった」、それから、「もう一度つき合ってみないか」と。


私はズルい。

先が見えない夫との関係に疲れていたせいもあるけれど(それはひとえに好きだからこそなのだが)、もし、こっちの人とつき合って、こっちの人を好きになれたら、それはそれじゃないか、と思った。


万一、夫が私とつき合ってるつもりでいるとしたら、私の方で二股をかけることになる。それは、言葉にするとイヤなことだったけれど、婚活では、双方が「結婚前提でちゃんとお付き合いしている関係」だと認識してない限りは、まだ「検討段階」にあると考えて、だとも言われている。


いま思えば、保険がほしかったのかもしれない。

疲れていたので、少し余裕を持って向き合いたいと思った。あの人がダメでも、この人がいるんだと、自分自身も様子見のつもりで、もっと泰然と構えられたらいいな、と。


こうして、私と”第二の男”は、夏の終わりにドライブデートをすることになった。

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