黄色信号。

地上に戻って来た私たち。


もう私に泊まるところがあることは夫に言ってしまった。

あとは、夜ごはんを食べてデートは終了となる。


夫は、ホテルの前でいったん私を下ろした。

私はチェックインして荷物を部屋に入れる。

ホテルは駅の近くにあり、夫の家もそこから近いということで、いったん帰って、濡れた靴を履き替えたりして出直してくるということになった。

私は、温泉へ行く途中に話していた旅行でお土産を買ってきていて、それを渡してあったのだけど、夫が持ち帰ってしまう前に、品物について説明しておきたくて、一つずつ、それが何で、どうして選んだかを話した。


それくらい、真剣に選んで買ってきたお土産だった。


だけど、結婚してからわかったのは、その時のお土産は、消え物以外は未開封のまま置きっ放しにしていたってこと(笑)。

タオルハンカチは「小さ過ぎる」。

おもしろいと思った小さい飾り物は「???」だったみたいだ。


私は今でも、実用的なもの以外で、夫が何を喜んでくれるのか、ツボがわからない。


さておき。

荷物を部屋に入れてからホテルのロビーで待っていると、徒歩で夫がやって来た。

近くの店で軽く食べて、お開きって感じなんだなぁとさびしく思った。

心のどこかで、エンドレスの夜を望んでいたのかな、私ったら。


店では、明日からの出張がどんなものか話してくれたりしたと思う(調査旅行みたいだった)。

疲れてもいたようだったので、早めにお開きした方がいいのかなという雰囲気だった。

ただ、その前に、次回の会う約束をなんとか確実なものにしなくては。


次回の約束。

翌月に、夫の入ってるアマオケの定期演奏会がある。

私は、演奏会そのものにも興味があったけど、何より舞台上の夫の晴れ姿を見てみたくてたまらなかった。

だから、以前のメールで演奏会の話を聞いた時にすぐに、行きたい! って思ったのだ。

それに、そういう時は、やる方は「ぜひ来てください!」って言うパターンが多いだろうと思う。


ところが、情報として教えてくれただけで、誘ってくれるような言葉はなかった。

私が恐る恐る、「行ってもいいですか?」って訊いたくらいだ。そんなの、チケットさえあれば誰が行ってもいいものなのに。


夫は、団員に配られる招待券を回してくれるようなことをメールに書いていた。

花火デートは成らなかったけど、次こそはとそこに狙いを定めていたので、夜ごはんの席で確認してみたら、夫の答えは、「呼んでるソリストが人気があって盛況が予想されるので、いつもは団員に配られる招待券もないし、チケットももう売り切れかもしれない」だった。


え!? なら私、どうしたらいいの!?


あまりの淡々とした言い方に、来てほしくないのかな、とさえ思った。

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