ほんの少し踏み込む。
激しい雨の中、なんとか通行止めになることなく温泉に到着。
あとは野となれ山となれ。
夫は前庭の脇に車を止めると「ちょっと」と言って急いで降りていって、近くの建物に駆け込んだ。
戻ってくると「トイレに行きたくてしょうがなかった」と言う。
私の渾身のお土産話に反応が薄かったのは、もしかしてそのせい!?
途中、トイレに行きたいとも言えなかったの?
まだ、私にそこまでも気を許してないのかなぁと思ったけれど、でも内心で可笑しくもあり、初で不器用でかわいらしい人だなぁと思った。
二人とも何も用意がないので、お風呂に必要なものを借りたり買ったりした。
そして、目安としてどれくらいで出てくるかを決めた。
やっぱり私は遅くなって、本当は目安にした時間までも必要ないくらいカラスの行水な夫をずいぶん待たせてしまった。
ロビーのベンチに座って、男湯、女湯がそれぞれどんな感じだったかを報告し合う。やっぱり一緒に浸かって楽しめる方がいいなぁ。
天気のこともあるので、あまり長居せずに地上に戻ることにした。
結局、通行止めになることはなかった。ワクワクの魔法はあっけなくとけてしまった。
道中、夫が抱えている憂うつな仕事のこと、お互いの性格のことなどを話した。
実は、こうしている間も仕事が心に引っかかっていて、落ち着かない気持ちなのだと夫は言った。
だとしたら、お泊まりの攻防(?)なんて、頭にあろうはずもなかったんだろう。むしろ、そんな時に私につき合ってくれてありがとう。
性格の話は、私たちの会話が意気投合するみたいな盛り上がりを見せることがほとんどなく、とにかく私ばかりがしゃべりまくっていたので、うるさくないかなぁ、少し静かにしててほしいとか思ってないかなぁと気になって、私が「うるさくないですか?」と訊いたところから始まった。
夫は、自分は会話下手、口下手なので、相手にしゃべってもらえると間が持てて助かる、と言った。
そこから、自分を理屈っぽいと思っているようなことを言って、理屈っぽい人の会話はどうなるかみたいな流れに。
私も、自分は女にしてはけっこう理屈っぽいところがあるかもしれない、などと言った。
確かに、あまり自分から積極的に話さない夫。
でも、私の話の合い間にポツポツと話してくれる話し方も、内容も、私にはとても貴重で(笑)、夫といるのは楽しかった。
毎回、最後には別々に帰る悲しさと、「そのあとは?」と先が不安になることを除けば。
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