イントロダクション。
出会って、アプローチして、どれくらいでメールをくれたのだったか、
そして、なぜ、時間が経ってからメールをくれる気になったのか、
しかも、あのような素っ気ない文面で。
それは、夫に訊いたことがないので、今もわからない。
ふと気が向いたのかもしれない。
だとしたら、その「ふと」という運命のさじ加減は、
なんと紙一重の危うさだったことか!
その時、さらに「ふと」ほかの何かに気を取られたら、
それきりにされてしまったかもしれない。
現実の世界でも、彼の頭の中でも、
その時ジャマが入らなかったことに、
本当に感謝したい。
そもそもを言えば、私が夫の「見た目」に一目惚れしたのだ。
そういうことは、そうそうない。
自分の審美眼的に彼を完璧に好ましいと思えて、
しかも、子供のころからの理想にもピッタリ。
そんな人、滅多にいない。
それまでは、せいぜいが、マッチョだ、とか、
笑った顔がかわいい、とか、
ガタイがいい、とか、外見に関しては、その程度。
そうだ、一度だけ、見たとたんに
「この人はどうしてこんな哀しそうな目をしてるんだろう」って気になって、
「いつか、そのナゾを解きたい」と思った人がいて、
数年後につきあうことになった、ということがあった。
あとで思うと、ひげを生やして、ガタイもよくて、笑った顔がかわいくて…
と、外見が好みにピッタリだっただけでなく、
性格も愛嬌のあるキャラで、愛すべきボケなところもあり、
一方で頭が良くて、思い切りもよくて、機を見るに敏なところもあった。
自由奔放に生きている人。
でも、あえて、ある時期だけ、
縛られてやってみようというスタンスで仕事をしていたような人だったと思う。
夫も、全体的にちょっとそれと通じるところがあるかな。
違うのは、自称「奥手」というところか。
二人だけで会う前、長い自己紹介のようなメールをやり取りした。
そこに、「鈍感」で「恋愛体質ではない」ので、
あまりそういう経験をして来なかったようなことが書いてあった。
逆に、「哀しい目」の人は、百戦錬磨なところがあった。
これまでの中で一番長い年月つきあった人だったけれど、
バツイチで、はじめから「結婚」はないと言われていた点が、
当時の私としても、ありがたかったせいもあるかもしれない。
いま思うと、あのころから私はもっと、
結婚というものを自分にも可能性のあることとして
考えていた方がよかったはずなのだけど、
でも、だったら、今の夫とも出会えなかったわけで。
今が、今までで一番幸せだから、これでよかったのだ。
そうだ、私たちは、二人だけで会うまでのほぼ1カ月、
ずいぶんメールをやり取りした。
お互いを知るための、長い長い自己紹介のようなものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます