第38話
上原正治警視正は落ち着かない。
(何かが・・・違う。今から何が起るのか・・・早く状況を判断しろ。そして、行動しろ)
奈良博物館の入り口にやって来たが、何度も中の様子を気にしている。
(可笑しい!)
小原はまだ動かない。
彼の周りには、人の気配が全く感じられないのである。入り口にいる筈の警官が見えない。
(俺の気のせいか・・・みんなは何処へ行ったんだ!)小原は、博物館の中からお押し寄せて来る怪しい気配に気付いている。
「何なんだ、この気配?奴か・・・」
(みんな何処へ行った・・・!)
確かめるしかない。小原は博物館への階段を急いで上り始めた。
しかし、すぐに彼の足は止まった。
ピピッ、ピピ・・・
小原はその声につられて空を見上げた。
(いた!鳥・・・小さいな、小鳥だな。いつか・・・見たことがある)
気が、小原にはした。
彼は単純にそう思った。
よく見ると、
(あいつ、何かを咥えているな)
そう気付いたと同時に、その鳥は、小原の肩に止まった。
ピッピッ・・・
(こいつは口がふさがっていても、喉元から鳴き声を出しているのか!)
なかなか小原の肩から飛び立たない。
(器用な鳥だ!こいつ・・・奴は、来ているのか)
小原は走り出そうとしたが、その前に、九鬼龍作の相棒の鳥は、咥えている小さな紙片を落としたのだった。この時には、この小鳥を九鬼の仲間と小原は認めている。
「おい、お前、奴は来ているのか?何処にいる?」
小鳥が返事をするわけがない。彼は目の前を舞った紙片を捉えている。
「何だ?」
小原が屈んだ途端、小鳥は飛び立った。彼は雪に落ちた小さな紙片を拾った。
「何かが書いてある」
彼の口から、この言葉が出たのである。
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