第3話 保健室
ベッドに腰かけた叶多は息を切らしながら、天舞音に目をむける。
天舞音は立っているが、息を切らしているが何かと立てている状態だ。
天舞音が息を切らしているのは、叶多を連れて保健室まで来たのもあるだろうが、一番の理由としては教室での一件の余韻のせいだろう。
それは叶多も体験した事だった為、天舞音のその体調がどれ程のものかは理解していた。
そんな二人に会話は無く、保健室は静寂に包まれていた。
しかし、その静寂を天舞音は切り裂く様にして怒りを露にする。
「許さない。この私にこれ程の屈辱を与えるなんて」
叶多は天舞音のその言葉に肯定も否定もしなかった。
ただ、初めて聞いた天舞音のその言葉の心地好さに、言葉を失っていた。
そんな叶多に天舞音は顔を近づけ、不満そうな表情を向ける。
そんな天舞音に声をかける事も、避ける事も出来なかった叶多は天舞音のその整った顔立ちを見つめていた。
「ちょっと、聞いてるの?許さないでしょ?」
答えを迫られた叶多はなんとか、答を絞り出した。
「う、うん」
「そうでしょ。許さない。絶対!」
怒りと復讐に燃える天舞音を止める事も無く、そんな天舞音をただ見つめていた叶多の隣に天舞音は勢い良く座り込む。
その衝撃によって、ベッドは揺れる。
「……なんでここに座る?」
叶多は純粋な疑問を天舞音にぶつける。
「……どんな能力だと思う?」
天舞音は叶多の質問に一切答える事なく、己の疑問を叶多にぶつける。
自身の質問が無視されたが、叶多は天舞音のその質問に頭を悩ませていた。
能力と言っても、情報は少ない。
ある情報と言えば、天舞音と叶多は同じく性感覚を弄られた事と、同じ教室に居た事ぐらいだ。
そんな情報だけで叶多は答えを導き出す。
「なんの能力かは分からないけど、能力者は俺達と同じ教室に居た一年0組の生徒って事……ぐらいしか分からないけど」
「……あの状況なそれぐらいよね。でも、候補は生徒だけではないと思うの」
「生徒以外にも居ると?」
「うん。教師」
「……教師って教室に居なかった筈だが」
「……教室の外に居たら?……その可能性があるなら、一年0組以外にも居る可能性が浮上するわ。もう少し、絞れれば」
考え込む天舞音のその横顔を見た叶多も考え込む。
そんな叶多の頭に教室で起きた出来事を思い返す事柄出来た。
「肩。肩がぶつかった瞬間に俺は……性感覚を与えられたんだ。能力の条件は触れる事なのか?」
「肩ねぇ。私は今日、誰とも接触して無いけど……」
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