勇者の亡骸を探し隊っ!~僕は僕を消すために旅をする~

馬場ヤイリ

プロローグ

第0話 流れ星が落ちてきたゾっ

 ああ、流れ星よ。

 願いを叶えておくれ。


 僕は灰原幸夫ハイバラ ユキオ、三二歳。

 俗に言う、こども部屋おじさんっす。


 女いない歴=年齢の童貞で、Fラン大学を卒業してから、ずっと実家の自室でギャルゲー三昧。あ、ちなみに就職はしたことないです。てへっ。


 ハローワーク? 行けるわけないっしょ。どうせブラックな求人を勧めてくるに違いないんだから!


 午前二時。窓を開けると、キンと冷えた夜の空気が部屋に入ってくる。

 今夜は双子座の流星群がピークらしい。


 僕はひざまずいた。両手の指をぐわしと組んで、祈りのポーズで天を仰ぐ。


 ああ、流れ星よ。

 こんな救いようのない日常から僕の魂を解き放ちたまえ。


 僕の祈りが通じたのか、一つ、二つ、ほうき星が線を描いて消えていく。


 ああ! 消えないでおくれ。

 憐れな僕の願いを叶えておくれっ。


 そ、そうだ。ずっと夢見ていたことが――いや、妄想してきたことがあるんです。


 異世界転生。


 もうこの世界では逆転勝利なんて無理っす。

 だったら、異世界で人生やり直したい。約束します。もう逃げません。


 転生先では、美少女たちと旅がしたいです。よくある俺TUEEEのチートスキルはもちろん必須で。あ、あと見た目も中性的なイケメン男子じゃないと嫌です。


 勇者とかに生まれ変わるのは勘弁で。だって、責任重いじゃないですか。世界を救うとか、引っ込み思案の僕には無理ゲーだし。そうだなー、魔王討伐は誰かに押しつけて、僕はのんびり世界を見て回りたい。


 ジョブは任せます。ただ、強い武器はくださいね。近接系は恐いから嫌ですよ。モンスターから離れてもちゃんと攻撃できる遠隔系のヤツがいいっす。


 むむ、ちょっと注文が多すぎるかな。まあいいや。

 どうか、流れ星さまーっ。

 この灰原幸夫、三二歳にお慈悲をぉぉお!


 願いが通じたのか。

 夜空がぱっと明るくなる。ほうき星の群れだ。夜の闇を駆逐せんとばかりに星たちが煌々と流れていく。


 ――承りましたよ。そなたの願いを。


 え?

 夜空の向こうから、誰かの声が返ってきた。

 同時に、白く燃える光の球体がこちらに落ちてくる。


 え、嘘でしょ。ちょ、ちょっと! 誰もメテオなんて唱えてないから!

 いやぁぁぁあっ! 死ぬぅぅうう!


 こうして、流れ星――いや、隕石が僕の部屋を直撃した。

 体脂肪率40%の僕の体は、良く燃えた末に灰となって消えていった。

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