第10話10階層火竜

俺達は5階層から9階層迄順調に進んだ


 途中の魔物のボスは5階層ベヒーモス、6階層シルフィード、


 7階層コキュートス、8階層グリフォン、9階層バンパイヤロードだった


 時々、西野が俺を見る目が変わる時があった。西野、俺の脚とか胸とか見る


 多分、溜まってきてる。西野は俺を性的な目で見ている


 そういう時の夜に俺は例のごとく西野さんをパクリとして難をしのいだ


 幸い、まだ西野から言ってくる事は無かった


 ご褒美の紋章はかなり増えて来た。俺の右腕にはたくさんの紋章が刻まれた


 ユニークスキルは魔法が多かった


 風の攻撃魔法『ウインドカッター』、土の攻撃魔法『ストーンランス』等だ


 グリフォンからは『魔力盾』のスキルを貰った


 戦士職の西野が重宝した


 今まで剣で防御出来無い時はくらってハイヒールで回復するしか無かったが


 今は『魔力盾』を貼って、ほぼダメージを貰わ無いで済む


 俺達は10階層に挑もうとしていた。10階層は4階層に似ていた


 平原と太陽の無い広い空。そして、ドラゴンがいた


 おそらく火竜だろうと推測した


 ドラゴンは真っ赤で口には火の粉が溢れていたからだ


 ドラゴンについては神ちゃんに質問した


 火竜の弱点はもちろん水、それも氷系の魔法や武器位だった


 だが、おそらく俺達の魔法ではドラゴンの鱗を貫く様な魔力は無いだろうとの事だった


 ドラゴンには剣も魔法も銃弾も効かない


 ドラゴンのウロコはアダマンタイトを含み、


 最強の物理防御、魔法防御力を備える


 ドラゴンの他の弱点は目、尻尾、口の中位しか無かった。


 西野と作戦をねった。俺が囮になり、先ずは西野の矢で目を潰す


 そして尻尾にダメージを与えて、弱ったところで、口の中に飛び込み、


 冷気の魔法アイシクルランスを叩き込む。それしか勝機は無さそうだった


 俺は愛銃HK406に冷気の魔力を込めた弾丸の弾倉セットする


 階段を下がって行く。4階層と同様、直ぐに地面に達する


 俺達は丘に移動した


 ドラゴンの位置を把握出来る場所に迅速に移動する必要があった


 奇襲されたら、まず、勝機は無い


「いた!


 ドラゴンだ。うぇー、想像以上に怖い顔だな」


俺はショップで購入した双眼鏡でドラゴンを観察していた


 ドラゴンと目が合う


「嘘だろ!


 こっちが見えてるんだ。西野、見つかった。来るぞ」


「こんな距離なのにか?


 そうか、赤外線が見えてるんだ」


「多分」


 俺達は丘の草むらから身を隠してドラゴンを観察した


 どんなにドラゴンの目が良かったとしても、


 こんなに簡単に見つかる筈がない


 だとすれば、おそらく


 ドラゴンは俺達の出した体温による赤外線を見たんだろう


 ドラゴンは走って来た


 尋常ではないスピード、怖さはワイバーンの比ではない


 ドラゴンは肉食恐竜の様な体に口からは炎と涎を履き出していた


「高野、頼むぞ!」


 俺は無言だった。俺は臆してしまった


 ドラゴンと近づき、目の前にドラゴンがいる


 ドラゴンの体長は3m位だ。そんな、ちっちゃいの?


 なんて事は、本物のドラゴンにあった事が無い人間の言葉だ


 恐竜の様なドラゴンに驚く程の恐怖を感じた


「ひっ


 俺の目に涙が溢れた。」


「高野!」


西野が空間転移で俺の目の前に現れ、抱き抱えて跳躍した


 そこへドラゴンの頤の牙が空を切る。喰われるところだった。


「あ、ありがとう」


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫。俺、呑まれてしまった。ごめん」


「勝ったら、何かご褒美くれよな!」


「うん!」


西野から下ろしてもらうと俺は空間転移でドラゴンの横に突然現れると


 アサルトライフルで銃撃した。ダメだ。やはりほとんど効いてない


 『跳躍』、そして『空間跳躍』


空中で激しくドラゴンに捕捉されない様に機動し、短剣で攻撃する  


 短剣には氷の魔法が宿る、だが、ドラゴンはまるで鉄板みたいな硬さだ


 しかし、俺の役割はドラゴンの注意を引き付ける事、これでいい


 そこに、西野の矢がドラゴンを襲う。


「やった!」


西野の矢はドラゴンの左目を射抜いた


「よっやー!」


「まだ、右目があるよ」


俺は引き続きドラゴンの注意を引き付ける


 もちろん、見えない目の方を中心にだ


 西野の矢がもう片方の目を射抜く


 よし、俺はドラゴンの背後に回った。ドラゴンの尻尾が跳ねる


 その瞬間を待っていた


 ドラゴンの尻尾の腹側にアサルトライフルで銃撃する


 ドラゴンは激しい咆哮をあげる


 尻尾へのダメージはかなりのものだろう


 ドラゴンは激しい咆哮と共に無駄に動きまわる


 あとは隙を見て、口の中にアイシクルランスをぶち込むだけだ


 『瞬歩』でドラゴンの前にまわる。ドラゴンは目が見えていない


 だが、俺は大きな間違いを侵していた


 ドラゴンは目が見えてはいない


 だが、ドラゴンのセンサーは視覚だけでは無かった


 『瞬歩』、『跳躍』、『空間跳躍』でドラゴンの目の前に踊り出る


「駄目だ!


 高野!」


西野が絶唱する。ドラゴンはまるで俺が見えているかの様に俺の胴をその頤で捉えた


「ガ、グァ」


激しい、激痛が走る


 俺はドラゴンに胴を喰わえられていた。


『ハイヒール』


西野がハイヒールをかけてくれる。だが、


 ドラゴンの頤の力が強くなる。噛み切られる!


 俺は最後の力を振り絞って


 アイシクルランスをドラゴンの口の中に叩き込んだ


『アイシクルランス』


口の中に鉄の味がする


 ドラゴンの歯は俺の内蔵までいってるだろう


 俺が気を失わないのは『痛覚麻痺』のスキルのおかげだ


 激しい痛みは俺も西野も感じない


 アイシクルランスは効いた様だ


 ドラゴンは俺を落とした


 しかし、このままでは俺達喰われる


 と、その時、西野が俺の前に立ちはだかった


 ドラゴンの頤が西野を襲う


「に、西野」


俺は西野も喰われるのを覚悟した


 しかし、西野は喰われ無かった。剣をドラゴンの口の中に突っ込んだ


 ドラゴンは剣を噛み、口を開いたままだ。


『アイシクルランス!』


 『アイシクルランス!!』


 『アイシクルランス!!!』


西野が氷の攻撃魔法アイシクルランスを何度もドラゴンに叩き込んだ


 西野の魔力だと、20回位は撃ち込むとマインドダウンする


 西野は20回アイシクルランスを撃ち込んだ


 ドラゴンは倒れた。そして、消えていく 


 西野は既にマインドダウンしそうだ。俺の方を向くと


『ハイヒール』


ハイヒールを一度唱えると、そこでマインドダウンした


 西野の最後のハイヒールは助かった


 俺の命の火は消えそうだった


 胴にはドラゴンの牙に貫かれていて、


 両手共、骨は折れているし、ちぎれかかったいた


 西野のハイヒールのおかげでかろうじて右手が動く


 俺は倉庫から蘇生薬を出してなんとか飲んだ


 体が急速に癒えていく


 痛みは収まり。血も止まった


 3分程するとほとんど全快した


「に、西野」


駄目だ。完全に意識を失っている。


 休息の間は?


 周りを見渡しといつもの休息の間と魔法陣では無く、古い屋敷が出て来た


 普段と違う。もしかして、ここは最下層。下への階段も見当たら無かった


 俺は西野の頭を抱えて泣いた。


『俺達、帰れるかもしれない』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る