第二部 第8章 佑杏捜索の当日(3)

「私たち多分『双子の姉妹』よ」

  夕のこの発言は、佑杏にとってかなりのインパクトを与えた。今の彼女には到底受け入れられない。

「何言ってんの?急に。そんな事ある訳ないじゃない!あなた、自分が何を言ってるか分かってるの?第一、その根拠は何なのよ?しかも私は韓国で生まれ育ってるのよ?誕生日が一緒だからってイコールのはずないじゃない!」

  佑杏の声は同窓会の会場に大きく響いた。同期生たちの視線が一気に二人に集中した。会場が否応なしにざわつく。

「誕生日が現状の根拠だけど、いまその情報を集めている。だから今、佑杏に聞いてるのよ」

「誕生日が同じなら姉妹なの?世の中にそんな事ざらにあるわよ」

「じゃあ、ひとつ聞くけど、あなた韓国の仁川出身よね?」

「そうよ」

「その前年、韓国でイベントがあったでしょ?1988年に」

「ええ、ソウルオリンピックでしょ?」

「その年に私の両親はそれを観に行ってるのよ」

「それがどうかしたの?双子であることに何の関係があるわけ?」

 佑杏は正直はっとした。1989年、それはソウルオリンピックの翌年であり、夕と佑杏、同窓生たちの誕生年でもある。


「私の誕生日が同じならその可能性は否定できないわよね?仮にだけど」

  佑杏からは言葉が出ない。もし、夕と佑杏が『双子』という事が事実ならば佑杏本人にもかなりの衝撃の事実になる。

「でも、もしそうだとしたら顔や形がほぼ一致するはずよね。私たちは全然違うじゃないの」

「『二卵性』ならどう?」

「えっ」

「だからって、仮に私たちが双子だったらどうなのよ?」

 佑杏は、心なしか動揺していた

「佑杏は日本に来た理由が《『日本の父親』を捜すため》なんでしょ?それは今の流れだと、私の父親になる可能性があると思うわ。しかも、私の両親は韓国で消息を絶ってる。実は私も芸能界に身を委ねた理由が『なぜ私の両親は韓国の仁川で消息を絶ったのか』を知る為なの。あなた、韓国のお母さんに父親について何かしらの事、言われたでしょ?だから日本に来た、そうよね?」

  夕は冷静に話を進める。

「1989年に私たちは生まれて、その前年にソウルオリンピックがあり、その15年後に私の両親が韓国に行って消息を絶っている。この事実から推測されることは、」

 佑杏は耳を塞いだ。

「私たちは韓国のあなたの母親から生まれた『二卵性双生児』で、私の日本の両親は韓国であなたの出生に関係する誰かしらに殺害された、ということなの」

「それ以上言わないで!」

  佑杏は絶叫し、両耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。

「あなた、韓国の母親に何を言われたの?」

 夕は佑杏の核心に迫りつつあった。

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