第二部 第4章 朴佑杏なる友人
桜田の配慮で車は無事取り戻したものの、現時点で聡志の運転では万事覚束ないのは痛手である。だが、夕は自ら芸能活動に突如の終止符を打ち、自身が持つ「両親の死」への疑問を解明する事に専念することにしたのだ。これからその解明に乗り出すのには足回りが良くない事はネックになる。黄色の凹んだビートルを取り戻した夕と聡志であったが、この先も前途多難であった。動かないビートルの車内で、二人は今後のことを相談し始めた。
「夕さん、これからその疑問を解明していくんですか?」
「うーん、ノープランだがな。だけど、これまで結構なヒントは得たつもりなんだ」
「そうですか。あ、そういえばまだその事について最後まで伺っていませんでしたね。お話しいただけますか?」
「わかった。話そう」
夕はきりっと表情を変えた。
「両親の事件の手がかりとしてまず第一に、両親は韓国の仁川で殺害された事。二つ、その死が高校の時の友人である朴佑杏(パクユアン)と何かしらで繋がっているであろう事。彼女は仁川出身だ。三つ、その繋がっているであろうという決定的な証拠は・・・」
「佑杏の生年月日が俺と同じであるという事だ」
「え?」
聡志は言葉に詰まった。
「そうなんですか?何でわかったんですか?」
「彼女が落した生徒手帳を拾った時知った。1989年9月2日だ。今は2010年だから俺と同じ21歳だ」
「それはそうですけど、偶々かも知れないじゃないですか。一概には関係あるとは言えないのではないのですか?」
「まぁそうだ。だが、彼女と話しててあまり違和感が無いんだ」
「という事は・・・」
「ユアンと俺が双子である可能性がある。しかも二卵性の」
聡志は黙り込んでしまった。
「彼女は最近グラビアで頭角を現しつつある。だから、まずは彼女とじっくり話す必要があるな」
「そうですね。やはり何かしら『似ている』と感じた点はあったのですか?」
「ある時『好きな男性のタイプ』を聞いた事があった。JK辺りのトークならありがちだろ?その時彼女は『体育会系のガチムチ』の様な男がタイプだと答えた。その詳細が俺の父親の特徴には端々が似ていた。しかし、俺はその事は伏せて話を聞いていた」
「ほう、それは有力な事柄ですね。双子であった場合、事件の解明の大きな手掛かりになりそうな気はします。では、現時点でそのパク・ユアンなる女性とじっくりお話を聞かないとですね」
「まぁそうなるな」
「で、どうします?具体的には」
「今度、高校の同窓会がある。その時に聞いてみようと思う」
「いいですね。それはチャンスです」
「おい、それよりもこの車、全く進んでねぇじゃねぇか!おっさん!」
「あらら、そうでしたね」
聡志はポリポリと頭を掻いた。
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