第27話 リュックとカイトの爆風の戦い

 「それ」っと、手を入れた袋から取り出しては周囲に投げ落とす。


 リュックの周囲には、まるで結界のように剣も、槍も、弓矢もばら撒かれた。


 まずは、その1つ。長剣を手にしたリュックは――――


 投擲


 ただただ、カイトに向かって投げつけた。


 それを切り払うカイト。しかし、次に向かってくる無手のリュックの速度は速い。


 次のリュックの攻撃手段は――――


 意外、それは打撃。


 小柄な自身の体を武器に変え、大砲の如くの飛び膝蹴りをカイトの顔面に叩きこむ。


 常人ならば、即失神コース。


 だが、カイトは後方に反り返り、倒れていくものの……その瞳には強い意識が宿ったまま。


 さらに、リュックは倒れ行くカイトとに何かを投げつけた。


 液体が閉じ込められた瓶。それも2本。


 |回復薬(ポーション)? ――――否。


 瞬時に毒薬と判断したカイトは、全力投球されたそれを割れぬように衝撃を吸収しながら受け止め――――


 そのため、両手がふさがり、次の瓶を受け止めれない。


 瓶の液体は、先の2本よりも透き通った琥珀色……つまりは爆薬だ。


 カイトは手にした毒薬を投げ捨て、爆発しないように瓶を……


 だが、なんらかの細工が施されていたのだ。


 カイトが手にするよりも早く、空中で爆発が起きた。


 爆音―――否。


 音を置き去りにして爆発の閃光が空間を支配する。


 遅れて叩きこむれる爆破の衝撃は、周囲を破壊して地面の砂土を高く、高く舞い上げられる。


 砂煙で爆心地は見えない。


 だが、あり得るだろうか? 零距離で爆破によって高温、爆音、衝撃を叩きこまれて無事な人間がいるだなんて……


 だが、いた。


 砂煙が晴れていく中で蠢く生命。


 カイトは立っていた。 カイトは立ち、剣を構えている。


 その口からは、人ならざる者が発する咆哮。 赤く染まった両目には怒りが灯っている。


 ならば……ならば……とリュックは考えながらも思わず笑う。


 カイトから怒りを引き出した。それは、紛れもなくダメージの証。


 痛みを感じているから怒っているのだ。


 (来い! 怒りのまま、自分の結界内に入ってこい!)


 下がるリュック。 それに応じて、前に―――


 リュックの武器、防具が無造作にまき散らされた空間にカイトは入る。


 そこに足を踏み入れた次の瞬間には――――再び爆破!


 地雷。


 ばら撒かれた武器に紛れて、地面に設置された爆破物。


 大型のモンスターでも、無傷ではいられない破壊力。


 ……そのはずだった。 しかし、カイトはダメージを受けるまでも、致命傷にはならない。


 なぜか? おそらく、塔の影響。


 カイトの願いである正義を成すための力。 それがカイトの肉体を強化させている。


 それでも――――


 リュックは手にした槍をカイトへ突き立てる。


 確かに胸を貫いたはず。だが、カイトは突き立てられた槍を掴む。


 心の臓にすら届いているそれをカイトは物ともしない。


 それどころか、さらに深く体内に潜り込ませることで、リュックを引き寄せていく。


 戦慄。


 だが、カイトの止まらないが、リュックもまた止まらない。


 「このッ!」と槍を手放し、カイトの顔面を鷲掴み。


  その手には、いつの間にか手甲がはめられている。

 

 もちろん、それは爆薬仕込みの手甲。 計算された爆破の方向。


 爆破の衝撃は、全て前方に―――すなわち、リュックが掴んだカイトの顔面に集中される。


 そして――――爆破。


 ――――とはいえ、爆破物を仕込んだ手甲をはめたリュックの手が無傷ということはない。


爆破の中に紅の鮮血が入り混じり、カイトにダメージを与える。



常人ならば、何度死んでいるだろうか?



心臓を貫けれ、顔面を爆破されたカイトは、今も立ち。


猛獣の如く、凶悪な殺意をばら撒いている。


「殺してくれか……ずいぶんと簡単に言ってくれたもんだね、カイト」 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る