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それから目を閉じ暗闇が過ぎると、懐かしい光景が広がっていた。
一年前の夏のこと。優人は遊園地にいた。寂しく一人でアミューズメントパークに。なんて、そんな悲しい現実ではない。むしろ、その逆である。
『ふぅ。ちょっとだけ早く来すぎちまったな』
待ち合わせの相手は、優人の彼女。つまり、交際相手だ。中学を卒業するまで、彼女の存在等一ミリも感じさせられない非リア充を彼は体現してきたが、高校入学後間もなくして、春がやってくる。クラスは違えど選択授業で共にし、そこから意気投合。美人な彼女と交際して数日の初デートが、遊園地ということだ。
(選択授業、マジ感謝!)
高校二年になった今の
(お、そろそろだな。どんな服で来るんだろう?)
ワクワクは止まることなく、数分が過ぎる。
(化粧とかしてくんのかな?)
よくよくおもえば、脳内での独り言がやや多い。
(オシャレなバッグとか持ってきたり、とかしてたりしてな)
そして、妄想癖もなくはない。
(そんでそんで―――)
テンションも一段階上がる。内弁慶とまではいかなくとも、それはもうとどまることがない。
(って、あれ?)
そこに歯止めをかけることが起きる。
『もう時間だよな? (とっくに過ぎてるし、まさか場所間違えたか? )』
優人はスマホの時刻を見た。示していた時間は、9時30分。待ち合わせにしてされた時間は、9時ちょうどのはずだったのだ。念の為LINEのトーク
(間違ってないな。まさか、何かあったのか?)
心配は加速し、彼女に今度はメッセージを送る。
(【もう着いてるんだけど、もしかして、待ち合わせ場所間違えてる?】っと。こんなもんか。……え、良いよな? これで良い、よな? 良いよな!?)
文字を打ち終え、誤字脱字がないことを確認した。そして、送信ボタンをクリックしかけた時、事件は起きた。
カサコソカサコソカサコソ……。
『……』
そんな害虫が現れたのだ、優人の足元に。G、
『あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
その一日、遊園地の診療所で大半をお世話になられ、まともに遊べなかった。これが、優人の青く苦々しい青春の一ページが刻まれた思い出でもあった。
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