第25話


「お待たせ。待たせたね。」



(この声・・・アザゼルの声?)

俺は恐る恐る目を開けた。そして目の前には狼男ではなくアザゼルがいた。



「えっアザゼル様?さっき目の前に狼男がいてそれで・・俺死ぬかと思ってそれで・・・」



俺はパニクって言葉がうまく話せず何を伝えたらいいのかわからなくなっていた。

そしてアザゼルが口を開いた。



「ごめん、ごめん、ルシファーはまだ俺の能力のこととか詳しく知らないからびっくりしたよね・・・

俺の能力は幻獣化なんだ。そして今使っていたのが幻獣化・人狼だよ。」




(幻獣化・・・やっぱかっこいいな・・・そういえばアントニーも幻獣化だよな?)



俺は自身の能力と比べアントニーの能力が羨ましく思った。


「アントニーもアザゼル様みたいに幻獣化できるのか?」



「うーん・・・」

俺が質問するとアントニーはなかなか答えず、代わりにアザゼルが話だした。



「まぁまだアントニーは特訓の中だからね。それに幻獣化は簡単にできる訳ではないしね

そもそも幻獣化は幻獣の魂と自身の魂が共鳴しお互いの魂を繋げることで初めて幻獣化できるんだ

それに俺みたいに幻獣そのものになれる者は現冥府にはいないよ、大体の奴は一部のみって感じかな・・・

まぁそれほど難しいってことさ。さぁ早く行こう時間がなくなるよ」




アザゼルはそういと俺たちをアントニーが言っていた時空が歪む洞穴へ連れていった。




「アントニー、ルシファーを連れて離れていてくれるかい?いつもとはちょっと違うことをするから

それに今からなる幻獣の魂は扱いにくくて難しいんだ。」



アントニーは俺の手を引っ張り後ろへ連れ出した。



アザゼルは両手を合わせ魂と精神を集中させていた。


「ベスティアソウル・幻獣・ケルベロス・【スフラギダ・解】」



能力を使うとアザゼル の体の周りを黒炎が包み込み時空の歪みの中に何処かへ繋がる通路が出てきた。



(この先は大変だな・・・あいつ怒るかな・・・苦手なんだよなぁ・・・)

「さぁ2人とも行こう、ルシファーもお待ちかねの【覚醒】の能力者に会えるよ」




アザゼルは内心不安を持ちながらも2人を目的地へと連れていった。



時空の中に入ると一瞬だった、足を踏み入れるとその先は違う空間だ。


(すげー・・・ワープみたいじゃん・・・。)


そしてその先に広がる光景は荒れ果てた砂地と洞窟や岩がゴロゴロあるだけだった。



「かなり荒れ果てた砂地だな・・こんなところに本当にいるのか・・・?)



「ルシファーちゃんすごい所だね・・・僕・・・冥府に来てからこんな光景初めて見たよ」



アントニーは話しながら震えていた、多分殺気が漂う空間に恐怖を感じていたのだろう。

俺も同じだった。この地に来てから殺気や誰かに見られている気配がする。

そしてアザゼルが俺とアントニーの肩に手を置き話し出した。


「2人とも心の準備はできているかい?この先の洞窟に能力者はいる、

言葉は選びながら話すことだよ、じゃ行こうか」



俺はこの先にいる能力者に会えると分かった瞬間極度の緊張、震えに襲われた。

自分で選んだ選択のはずなのに恐怖心もあった。

転生前の人生では感じたことのない恐怖心だった。

そしてアザゼルは2人を連れ洞窟へ向かった。


洞窟の中に入ると話声は当然ながら響き渡る。




「こんな洞窟の中に本当に能力者はいるんですか?全くいるようには思えないんですけど・・・」



俺はとても住めるような環境に思えず、アザゼルに質問した。



「まぁ確かに誰もがそう思うよね・・・でも気を抜かず覚悟はしておいてね。僕からはそれしかいえないよ」



その時・・・誰かの声がした。


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