第11話


「・・・・・・・・・・・」


俺は言葉が出なかった。

世界が違いすぎる・・・元々人間だった俺には到底理解できない・・・

現状を理解する頭も知識もない・・・




「ん?ルシファーちゃん、もしかしてびっくりしてるの?凄いよね、この世界は・・・

僕たちには理解できないような世界が沢山あるんだ。

人間だった頃の僕はこんな素晴らしい世界があるなんて考えもしなかったよ、

むしろ空想の世界だと思っていたよ。もちろん死神だけどね。」


アントニーは俺に気を使うように場を和ごましてくれた。そして、心が落ち着き

アントニーに話しかけた。


「アントニー・・・ありがとう・・・確かに最初はびっくりしたけど・・・

それ以上に俺は・・感動してるんだ。幻獣とか俺はよくわからないけど、

幻獣界は俺が想像していた世界とは全く違ったよ。【無】みたいなの

想像してたけど現実の幻獣界は素晴らしい世界だよ。綺麗だ・・・」


俺は幻獣界に感動した。この幻獣の世界は美しい。俺の目の前には一面の草原が広がっている。


その先には、山・火山・そして何より・・・【ドラゴン】幻獣の形をした馬鹿でかい山がある。


この空想のような世界に感動し俺はその場を動くことができなかった。



アントニーがそばに寄ってくると幻獣の形をした山について語り始めた。


「ルシファーちゃん・・あの山凄いだろ・・・?あの山は生きてるんだ。」


「えっ?確かに見た目は素晴らしいし幻想的で今にも動き出しそうな感じはするけど・・・

あくまでも形だけで山だろ・・・?」


俺はアントニーの発言にびっくりし否定的な発言をしたがアントニーは話を続けた。



「あの山の名は【マザードラゴン】っていうんだ。幻獣界の母だよ、1000年に一度

幻獣界に命与え命を食うんだ。その時新たな幻獣達が目を覚まし生き絶える幻獣もいるんだ。

そして3日後、また1000年の眠りにつくんだ、このことは、死神界では・・・

冥府を作った大王様とベリアル様しか知らないんだ。」


話を終えたアントニーは少し悲しげな表情をしているように見えた・・・


「でも大王様とベリアル様しか知らないことをアントニーはなんで知ってるんだ?」


「・・・・そんなことよりルシファーちゃん見回りに行かなくちゃ、

タナトス協会に報告書を提出しなきゃいけないんだ。」


俺は疑問に思い聞いてみたが見回りを忘れていたことを思い出し

アントニーと俺は慌てて見回りに回った。




「なぁアントニー幻獣界の見回りって具体的に何するんだ?しばらく歩いてるけど

全然幻獣なんていない気がするけど・・・」


幻獣が一体もいないことに疑問を抱きアントニーに質問したが答えてくれず・・・

アントニーは先に進んだ。




しばらく沈黙のまま歩き続け森林の奥にある鳥居の前でアントニーは立ち止まった。


「この先には俺が見回り仕事を始めてからずっとお世話している幻獣がいるんだ。

僕も同じように見回りを始めてから幻獣がいなことに疑問を感じていたよ・・・

幻獣界を探し回ったよ。そしてこの先にいる幻獣【ヘルハウンド】の子ボニーを

見つけたんだ。ボニーには色々聞いたよ。正直びっくりした・・・

まぁまずはボニーに会ってみてよ。状況を見てルシファーちゃんにも話すから。」



アントニーは悲しげな表情で話してくれた。俺は何も言えなかった。

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